ぬりかべ考

語っても許されそうなパズルなどこれしかない。

転載改変自由。特にパズル制作者による吸収歓迎。

解き味とか作成とか醍醐味とかに関するあれこれ

黒マスはひとつながり

まあそうなんだけど、視点がマクロになったときは「分断禁」と考えた方がわかりやすい。この場合、クロスワードで黒マスを追いかけるように、ぬりかべでは白マスを追いかける。

白マスを縦横斜めにたどっていって、盤面を2つに切ったり、ぐるっと囲めるような白マス配置はできない。下記の盤面ではaが黒マスになる。

    
     
a    
a    
a     
      

この解き筋を強要させる問題は多くはないけれど存在する。上手く使うと効果的だが、煩雑に思わせてしまうこともある。ペンパ程度の長方形サイズで、狭い側、ペンパでは横に使うと分かりやすい。

応用手筋として、片方をアースさせた状態での適用がある。下記の盤面でもaが黒マスになる。これは確かに格好いいのだが、読むのが大変なので隅といったごくごく狭い部分の適用にとどめたい。

      
a 4  
a4 5
a 5  
      
      

(2002.11.21)上記盤面で2つの4が確定する、と嘘を書いていた。2段目2列目の升目はもちろん確定しない。例えば右側の5の右上に2以上、その右下に何か数字を置くとやっと確定する。

アースというのはにゃんこばずうか氏命名。該当するマスから(ぬりかべの場合)白マスを縦横斜めにたどっていって、四辺の壁までたどりつける場合、該当するマスはアースされているという。

1。

1は相当に万能な数字で、数字を対象配置にしたときに、片方がどうやっても決まらない、なんていう状態のときには1を適当にばらまけばたいていの場合なんとかなる。が、作り手としては避けたい。私の場合、対象配置にそんなに価値を認めていないので、あっさりと配置を崩してしまう。

やはり1の醍醐味は、空き三角の白を作り出しやすいことにある。1をひとつはなして斜めに並べるのが一番の基本形だ。

     
1  
   
 1 
     
      

ちょっと加工して、2を使ってこんな感じ。2の部分を適当に大きい数字にしてやれば、接続部分のできあがり。

     
14 
  
 2
   3
      

空き三角の白は造語。要するに下記のaが白マスになること。元は囲碁用語で、愚計の基本形とされる。

a

おいかけっこの醍醐味

こんな風に、いくつかの数字が一気に同じ方向に伸びていく形がある。ある程度作り慣れてしまう/解き慣れてしまうといまいちな感触なのだが、やはりこれはぬりかべの非常にプリミティブな醍醐味だ。私の場合、やや難しめな部分の直後にこれを適用させることがある。

531
   
    
    
     
     
      

同じおいかけっこでも、じりじりじりじりとひとマスずつ地道に伸びていくタイプもあるが、これは例示するのがもったいない。

2x2以上の空白

登場しにくい形なので、単純に好き。3x3以上の空白はほとんど見たことがないが、作例を見てみたい。美しく登場させることが出来れば相当なインパクトになる筈。すくなくとも私は登場するだけでかなり無茶な解き筋でも許します。

というか、誰か作ってください。

ペンパ用ぬりかべをつくる

10x10

かなり多くのパズルに言えることなのだが、さくさくと解けるようになると、10x10というサイズはかなり小さい。とくにぬりかべは小さい。一呼吸で作れる/解けるようなサイズでしかない。しかも、サイズと難易度は比例するというニコリの要請上、「小さいから許される無茶な難易度」という問題は非常に日の目を見にくい。

かくて、10x10というのはなかなかに扱いにくい。「初めてぬりかべを解くひとが、楽しんで解ける」という目標に対して、どこまで難しくして良いのだろうか? 実は、このサイズを作成する私はかなり投げやりである。「とりあえずいきなり決まる数字はあった方が良い」「基本ルールは全部使った方がいい」「しかも分かりやすい形で」くらいの方針で、数字をぱらっとばらまき、さくさくさくと解くようにつくる。3分で出来なかったら廃棄。そんな問題はやっぱり変なところで考えさせる問題になりやすい。

ま、そういう考え方なので、捨て問にすることもある。同じ数字ばっかりばらまいて、「とりあえず解けますよ」という問題みたいな奴で。

10x18

ずいぶん縦に長い。当然、縦に大きく数字をのばすと間延びする。留意点はそれくらい。作り方(解き方)は3つ。

最後の形が作り手的には一番気持ちいいが、かといってそればっかりというわけにも行かない。

個人的には盤面中央に機械的に下記の配置をして作り出しそうになる。横方向での分断禁が使いやすい。

          
       
       
          

14x24

このサイズから「作っている」という気分がする。おおきな仕掛けも可能になるし、数字配置で遊ぶことも出来る。数字3〜4個程度の似たような配置をばらまく、というのが最近の好み。

20x36

20x36は最初作った時は「なんてでかいんだ」と思ったが、ジャイアントを7本作った後では「ま、こんなもんかな」というサイズでしかありません。作っていて一番楽しいのは14x24か20x36ですかね。分断禁が無理なく大胆に使えます。好きな割に採用率が低いのは内緒。

実はニコリ本誌サイズの17x17は作ったことがありません。

ジャイアント

自作ジャイアント解説。別名蛇足。このサイズになると、「問題として成立している」というだけである程度満足してしまうかも。※そんなことをゆっているから依頼してくれなくなる。

vol.7

最初に依頼があったときは驚きました。おそるおそる作りました。左右対称で、下からちいちくとのばしていったのですが、ぜんっぜん埋まる気がしません。思いあまってその上に"vol.7"という数字配置を埋めました。7を構成する数字は全部7だったはずですが、最終的にはそのかけらもありません。正直、「とにかくうまった、解ける」という代物です。

vol.8

前回の反省から、全体の数字配置をある程度決めておこう、という方針で作りました。テーマは前回とおなじく数字。「はちばん」「エイト」「8」と埋めて、さくさくと。途中でゴミとなる数字が発生するのは気するほど余裕がありませんでした。

vol.9

また9番、も芸がないので今回はナインボールに。キュー、手玉、7番、9番とキャロムショットの盤面ができたので、あとは適当に。キューの部分の桂馬配置は簡単になりようがないので、「じりじりと、難しく」は数字配置をした時点で決定。3x3になる9を2つくらい入れた覚えがあります。

桂馬配置はこんな感じ。

○         
        
         
         

vol.10

10号。前回でやりすぎた自覚があったので、ぐぐぐっと簡単に、というのが基本方針。テーマは「スイート・テン・ダイヤモンド」。一見11個ですが、ひとつはハートになっています。このジャイアントはほんとに簡単です。作者チェックも非常に楽でした。

vol.11

中央にサッカーボール、下段にsocker。正直、思い入れのない、適当に作ってしまった作品。

vol.12

今回は初めて解き味に12を持ち出します。「白マスが4x3の長方形になる12って見たこと無いよなあ」ということから、これをメインに。「それを決定するのは難しいに決まってるから、全体も難しくなるだろうなあ」。しょっぱなに4x3を登場させ、序盤の終了時にうまく隅でもう一つの4x3の出現に成功。これがすべてなので、エンディングにもう一つ。「だいたいこのへん」だけ決めておいて、履歴をたくさんのこしながらエンディングへ。無事に3つめが登場してくれました。難しい方向ではかなり好きな作品。

vol.13

13号。一番いい加減に作りました。難しく、と言うことだけ決めて置いて、ぱらっと数字をばらまき、1時間ちょっとで一気に。チェックに2時間以上かかりましたが、珍しくバグなし。掲載時はこれが4番ではなかったことに驚愕したのですが、見た目の問題かなあ。一応13階段がモチーフ。

vol.14

14号。四角に切れ。ぬりかべではありません。えーと。解くこと自体10年ぶりなので、まずは現物を解いてから。13号のジャイアントを2つ解いて、先読みをどれくらい使うべきか検討をつけておいて、ざくっと。数字配置は5x5の四角をタイル上にならべて、タイルに記号を埋めていきました。記号をもう少し規則的にしたほうが見た目が良かったですね。反省。

vol.15

15号。これくらいは書いちゃっても良いかな。ジャイアントはもともと「(まともに作ってくれたら)確実にのせます」という、文字通りの依頼をもらって作ります。で、今回はさらに「こういうメンツで、あなたは3番目くらいを想定しています」という指定までもらっております。

それでこの難易度はどうか。反省しております。

まあそれを抜きにして、難しいぬりかべとしてはかなり気に入っていますんで、そのまま投稿してしまいました。解けば、あるいは解答ページを見ればやりたかったことは分かってもらえるかと。次も同じコンセプトでやりたいと思っていますが、はたして成立するか、作らせてもらえるか。

もう一つのテーマは、山ほどある2。2はちょっとした先読みの筋が山のようにあって、とことん使うとこうなる、という形をある程度示せたかな、と。

私以外の作品で、盤面配置で何か書く、というのをやってくれていて嬉しい。人のつくった作品の場合だと解読がそうとう難しいことも分かってしまいましたが。書いてしまうと、「ぬりかべぬりぬりたのしい。」と読みます。私がやるときと違って、ごみが皆無なのも美しいです。(02.08.08)

作成一般

解くようにつくれ、と言うキーワードで、実際どうにでもなる。作れば作れます。解けるぬりかべを作るのはかなり簡単。問題はそれが楽しいか。あんまり同じことや簡単なことを繰り返すとつまんないです。

でも。いわゆる「定番」は公式化した手順を、どう拾っていくかだけなので、あんまり思い入れを込めても仕方ない、というのが私見。がんがんつくって、評価はチェック時の自分と編集部に任せましょう。ジャイアントの場合は責任もあるんでそうも言っていられませんが。


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