「おしまいの日」までの単行本、ほとんど全部持っています。新井さんの文体、跡を継ぐ人、結局いませんね。素晴らしい文体だと思います。登場人物の心情を書くのが抜群にうまいと思います。特に好きな話を並べました。
全5冊からなるシリーズです。森村あゆみの成長物語なのですが、実に、その成長物語の王道です。キャラクターも魅力的だな。とくに、木村真紀子は主役になり得る深さを持ったキャラクターだと思います。「いかに久しきものかは知んなさいよ!」が最高。
5冊目のテーマはかなり重いものだと思います。「もって生まれた特性」というのはねえ。個人的に、「運動が出来ない」「勉強が比較的出来る」といったありがちな特性ですらだいぶ悩まされた時期もあるしなあ。(どちらも教師に嫌われる、という今から考えれば些細なことだけど)
外伝的なものとして、「星から来る船」が全3冊でできています。本編のどのエピソードよりも長い、という作者自らがあきれた長さ。リアリティ、というものはともかくとして、「おじいちゃんテロリスト」、好きだなあ。
一番好きな作品です。どういう話、って書きにくいな。とっても仲のいい、よすぎるくらいのふたりと、人の心が読める人の話。本当に好きな話って、なにを書いていいのかよく分からなくなるなあ。ごめんなさい。とにかく読んでください。いい話です。
この話、コバルト文庫の「ガールフレンズ」(氷室冴子)という本の中の対談(オリジナルは雑誌「コバルト」に掲載)で作者本人が語っています。物語の途中のあるシーンで終わった方がずっとインパクトも強く、出来が良かったのに、登場人物の心の安寧をもとめる気持ちがそれを許せなかったと。でも、僕はそこで終わらなかったからこそ名作だと思っています。「ゆがんだ関係」が治癒された、と二人が自覚できたシーンが実に印象的でしたから。
地球が滅びるという設定のもと、「それを阻止しよう」っていうんじゃなくて、地球が滅びるのは動かし難い事実となった場合の人間の様子が書かれているのですが、ほんとうに新井さんの書く人物の狂気は、どこか自然で、それが怖さを感じさせる。
あとね、この話って、作者が書けない書けないって執拗に言ってる、ラヴ・ストーリー以外のなにものでもないと思います。読み終えるとすっきりするんだよね。理由なんか言葉にはならないけど、あいたい。そういう想いがひしひしとつたわってきます。
角川文庫の解説が赤川次郎なんだけど、この解説、好きです。うん、新井素子は天才だと思います。
光合成をする地球外の生き物が人間に復讐をしようとする話。前作「グリーン・レクイエム」は読んでいなくても大丈夫です。
植物が、思いをもっているとして。人間のことをどう思っているか。ということがとことん追求されているのですが、脱帽しました。今でも新鮮な「植物の人間観」です。「あいしている」というこのキーワードが印象深くひびきます。
新井素子は狂った人、狂っていく人をかくのがとてもうまいのですが、その中から2作品。旦那が帰ってこなくておかしくなる人と、死にかけておかしくなる人です。どちらの二人も、狂っていく中で正常な思考をしているんですよね。どちらも読み終えた後、ちょっと背筋が寒くなる感じがします。
個人的には、「おしまいの日」はいいんです。でもね、「いまはもういないあたしへ」は、個人的な事情でとっても怖い。というのも、兄が「移植手術」を受けていまして、そういう意味で移植が身近な存在である僕にとって、脳以外に「死の記憶」が残っている、というのは本当に怖い話です。
もちろん、怖いが故に、この本は名作です。ええ。
全然発行順じゃないです。それに短評と言うにはあまりにベタな表現ばかり。