氷室冴子

少女小説が多いかな。「冴子の母子草」なる強烈なエッセイもあります(読んで面白かったとは言いません。肝をつぶしました)。

「なぎさボーイ」シリーズ

なんかこういう話って書きにくいな。コバルト文庫だから当然か、シチュエーションはいかにも少女小説的。女の子みたいななぎさちゃんと、多恵子が中心の話です。雨上なぎさの視点で書かれた「なぎさボーイ」、原田多恵子の視点で書かれた「多恵子ガール」、森北里の視点で書かれた「北里マドンナ」の3作です。本当はもう一人、麻生野絵の視点で書かれた本があってほしいけれど、ありません。

それぞれで一人一人の心情が細かく書かれていていいです。こういう心情描写が少女小説の典型的な醍醐味ですね。あとね、映像的にもいいんだよな。槇のところに走るなぎさちゃんとか、なぎさと北里がスシを食べるシーンとか。

あと、こういうことをプロの書いたものに言うのもなんだけど、作を重ねるごとに描写がうまくなっているんだよね。うん。

麻生野絵。この子に(小説上の)リアリティを感じないんだよなあ。是非麻生野絵編、今からでも読みたいんですけどね。

「なんて素敵にジャパネスク」

平安時代を舞台とした・・・なんとか物っていう表現がないな。ま、瑠璃姫という元気な姫のお話。平安時代を舞台とした娯楽小説はこれが初めてじゃないかなあ。そういう意味で評価できます。 山内直美による漫画版も悪くないです。

「海がきこえる」

2まであります。現代の恋愛小説です。高知出身の杜崎拓と武藤里佳子のお話。作者は「まずストーリーありき、ではなく、風景や、シーンと言ったイメージだけを連ねて一つの作品に出来ないかやってみた」とあとがきに書いています。その試みは見事に成功していると思います。それぞれのシーンがそれぞれいいんだ。映像的に浮かび上がってきてさ。とくに、2巻のビデオを見るシーン。

近藤勝也さんのかくイラストもいい雰囲気です。里佳子がいいですね。あのきつそうな目。

スタジオ・ジブリがアニメ化しています。原作の空気がそのまま残っています。おすすめできます。当時、小さな映画館で何回か見たなあ。

「銀の海 金の大地」

「真秀の章」全11巻のみ。人に貸す前に読み返したらすごくおもしろかった。むかし「ヤマトタケル」という本を書いているけど、こちらは「古事記」そのものを読んだ方が面白いかな? という出来だったのですが、これはオリジナルのおもしろさを持っていると思います。わずか半月のあいだに、真秀が成長していく過程が気持ちいい。波美の一族の存在もいい味だしてます。

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