第32回 乗り過ごす(99.01.25)

 東西線の中で本を読んでいた。森博嗣の「笑わない数学者」である。私は活字中毒者といってもいい。電車に乗るときはおろか、道を歩くときでも活字がないと落ち着かない、そういう人間です。

 雨が降っていた。いつもなら今乗っている電車で終点、中野まで行けばいい。本読みにとって最高に安心できる環境である。さすがに終点で降り損ねる心配はない。JR直通三鷹行きという罠さえなければ。そこから自転車だ。下手をすると自転車の上でも本を広げかねない。しかし今日は雨である。高田馬場で西武新宿線に乗り換えねばならない。野方にでれば歩いて帰れる。中野からバスではとんでもなくよけいに時間がかかる。

 今日は無事に高田馬場で乗り換えることができた。めずらしい。いつも中野についてから「さて、どうしようか」と思うのだから。今日はいい日のようだ。

 しかし160円の切符を買うのはめんどくさい。レオカードよ、なぜに君は自動改札を拒絶するのか。メトロカードが対応してはや5年、君もそろそろ年貢の納め時ではないのかね。

 しかしこの時間帯の高田馬場は込んでいる。次は快速か、じゃあ次の各駅停車だな。うん。じゃあまだしばらく読めるな。

 ――再び本に没頭――

 いつもここまでは間違えないんだけどなあ。何で鷺ノ宮にいるんだろうなあ。

 うーん。

 ――さらに本に没頭――

 さて、なぜ僕は西武新宿にいるのだろう?

 タヌキちゃん(*)への道は遠い。再読であるにもかかわらず、ここまで夢中になれる本に出会えたというのに、心はすっかりローである。しかし、雨の日に素直に家に帰れる確率が3割くらい(いや、もっと低いか)しかないというのは我ながら残念な確率である。

 西武新宿線の駅→  西武新宿…高田馬場…野方(快速通過)…鷺ノ宮

 過去には山手線で渋谷→大久保→代々木→大久保→新宿、とやったことがある。そのときはニコリ(パズル雑誌)であった。(渋谷−代々木−新宿−大久保)

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(*)「雑文館」より。