セルフつっこみという手法がある。この手法は諸刃の剣。あまり多用すると見向きもされなくなる危険もある。ま、吉野家のコピペもいい加減にしておけということですかそうですか。
(笑)もセルフつっこみの一つの変形である。この「かっこわらい」については多くの人が語っているので、ことさら自分で書くこともないと思っていたのだが、ひとつだけ書かせてもらっておこう。
「かっこわらい、かっこわるい」
嘘ですそういうことを書きたいのではありませんもうしません本題に入ります。
もともと(笑)というのは日本語の特徴を利用した独特の表現である。週刊誌の対談記事がその発祥かと思うが、その台詞によって、場に笑いが生じたこと記述する記号だ。ここで特徴的なのが、その笑いの主語が省略されていることである。(笑)の主体は、場にいた全員かもしれないし、聞き手ひとりかもしれない。話者がひとりで笑っているだけかもしれない。
松本「うーん、そうやね……お見合い……アクロバット(笑)」
という記述からはいくつかの可能性がある。
もう一つの可能性がある。もともと(笑)は主語を限定していない。だったら主語を著者や読者にしてもいいのではないか?
これが現在の(笑)の一つの使い方である。「メタかっこわらい」とでも言えば良いだろうか。この場合の(笑)は「笑い効果音」と同じ意図を持つ。ある年代以上であれば「八時だよ!全員集合」の、笑いどころに出力される合成笑い音といえばイメージしてもらえるであろう。
ここにきて、(笑)は対話と言った「場」ではなく、単なる平文に使うことができるようになった。
「こうして私はひとりでかえってきたのです(笑)」
上記の現場では「私」は笑っていないし、現場には他の観客もいない。笑う主体は「記述者」か「読者」である。この時点で、(笑)の描写する対象は現場から書き手や読み手にシフトしている。「劇場型(笑)」というと格好いいかもしれない(笑)。
これを応用すると、セルフつっこみとして(感情)を利用することが出来る。<span alt="あーこんなこと書いちゃった">(爆)</span>とか。<span alt="こんな事書いても分からないってば。">(謎)</span>とか。全然感情じゃないですねそうですね。
※もちろん、こんな文法はない<span alt="当然だろ">(当然)<span>。
※でもtitle属性で書くことはできなくもないなあ(困惑)。
カッコをつけるを読み返したらあまりにもあまりな気分に(爆)。いままで書いてきたことがあっさりと3行で解説されている。先人の偉業に敬意をはらいつつ、あえて実例に挑戦してみよう(滅)。
一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた(寒)。 雨にふりこめられた下人が、行き所がなくて、途方にくれていた(飢)。 でも泥棒するのもどうかなあ(逡巡)。 そこに登場する老婆が、死体あさりを始める(白髪)。 下人を見つけて言い訳をするには、「困ったときにはお互い様や」(開き直り)。 「だったら俺も困っている」(正当性確保)。 下人は、すばやく、老婆の着物を剥ぎとった(酷)。 下人の行方は、誰も知らない(謎)。
名探偵が指を突き出し、宣告する(後光)。 「あなたが犯人です(証)」 「その通りだ(認)」 犯人は抵抗する(動)。 「動いたらこの娘の命はない(殺)」 台詞を発しつつ、崩れ落ちる犯人(謎)。 その後ろから重い灰皿を持つアケミの姿が(解)。 「もう……終わりにしましょう……(幕)」
吾輩は猫である(名無しさん)。 どこで生れたかとんと見当がつかぬ(謎)。 何でも薄暗いじめじめした所で泣いていた事だけは記憶している(にゃあにゃあ)。 ここで吾輩は人間というものを見た(初)。 あとで聞くとそれは書生という種族であったそうだ(獰悪)。 この書生というのは時々我々を捕えて食うという話である(煮物)。 しかしその当時は別段恐しいとも思わなかった(無思慮)。 ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられ記憶ばかりがある(フワフワ)。 掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始であろう(醜男)。 この時の感じが今でも残っている(妙)。 第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしている(薬缶)。 その後猫にもだいぶ逢ったがこんな片輪には一度も出会わした事がない(爆)。 のみならず顔の真中があまりに突起している(鼻)。 そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く(煙草)。 どうも咽せぽい(弱)。