YOMUKA日記過去分 [perv] [next] [list] [new] [top]

1999.12.20 Mon. 99(ALL)

日付逆順。

12/20

 西澤保彦、講談社発行のものは読みました。カドカワのがみつかりません。タック&タカチのシリーズは好きなんだけどなあ。「麦酒の家の冒険」がよい。こういうちまちました推理合戦って、それほど好きな方ではないんだけど、このやりとりは楽しめました。

 マスターキートン、やっと古本で見つけました。

 京極夏彦「百器徒然袋−雨」は痛快。これぞエンターテインメント。

9/30

 鯨統一朗「隕石誘拐」はなかなかおもしろかったです。あの「邪馬台国」の第2作目、ということでどうかな、と思っていたのですが、さすがですね。楽しめました。まあ、かゆいところはけっこうあるのだけれど。「邪馬台国」はキャラクタのフィクション臭さがいい味だったのですが、今回はキャラクタのリアリティのなさがちと気になりました。

 渡瀬由宇「思春期未満お断り/続思春期未満お断り」各3巻ずつ、計6巻。ああ、この人、少年漫画の論理/ストーリーを少女漫画に持ち込んで成功した人なんだ、とあらためて思った次第。

 岡嶋二人「眠れぬ夜の復習」。いや、どうも「おかしな二人」を読んで以来この人の本を読む気になれずにいたんだけれど、やっぱり楽しいですな。うーん。

9/19

 アンチ・ミステリということばには未だに違和感を抱くのですが、「虚無への供物」、読みました。「ドグラ・マグラ」「匣の中の失楽」と読み進めて、とりあえずイメージはわかりました。あとは「黒死館殺人事件」でもよめば完璧でしょうか。

 で、「虚無への供物」ですが、まあおもしろかったです。解説にある純文学的云々、というのは時代を感じさせるくだりですね。推理小説における犯行の動機はどこまで許されるか? という話ですが、よっぽど森博嗣とかのほうがやばいよなあ、と。時代性を無視して発言すれば。

 ところで、殺人淫楽症とういのと、サイコパス、という言葉、どちらが恐怖を感じますか? という疑問で一番知りたいのは、殺人淫楽症、という単語が、当時はある種のリアリティを持っていたのか、ということと、今でも実はリアリティがある単語なのか、ということです。

9/13

 西澤保彦「無幻巡礼」。チョーモンインシリーズ第4弾。といってもなあ。これ1冊丸ごと伏線だって作者自らがあとがきで言ってるんだものなあ。そういう「反則」がゆるされそうな作家ではあるのですが、やっぱり許しません。

 やっぱりこの話は、シリーズ再終話の上巻、あるいは第1巻であるべきでしょう。肩すかしに匹敵するおもしろさはありませんでした。

9/12

 赤川次郎「藤色のカクテルドレス」光文社文庫。杉原爽香シリーズ。1年に1冊、きっちり1歳年をとってのこのシリーズも、ついに12冊。お話のほうはまあどうでもいいホームドラマなのですが、ここまでつきあってしまうと、ね。

 安永航一郎「県立地球防衛軍/全4巻」「陸軍中野予備校/前6巻」サンデーコミックスを併せて800円で入手。今読んで無条件に楽しいか、というと…というのがギャグ漫画のつらいところではあるのだが。

 浅倉三文「カニスの血を嗣ぐ」も読みました。ええ、読みましたとも。というほどでもないか。いろんな意味でもどかしい。

 部分的に私信。北村薫で読んだのは「空飛ぶ馬」「夜の蝉」「秋の花」「六の宮の姫君」「覆面作家は二人いる」「スキップ」の6冊になりました。

 落語はほぼ何も知らないので、そういう意味では「私」シリーズはちょっときついところもあるけれど、探偵役のおもしろさではやはり円紫師匠はいいなあ。主人公には微妙なところで共感できないのが何ですが。私の場合、「小説」の場合、新しいもののほうがおもしろいと感じる傾向が強い人なので。明治文学読むなら古典読む方が好みなんです。

 「きれい事を書いた上でひっくりかえす」というスタイルはあまり好きではありません。要するに安直なハッピーエンドのほうが好きなだけなんですが。そういう人間にとって、明治文学は手に取るのはつらいだけです。って一般論でくくれるほど読み込んでないんですがね。

9/09

 FRONTPAGE2000。ホームページ作成ソフトです。やはりかゆいところ続出。でもいろいろありまして乗り替えることにしました。

 ニコリ(パズル雑誌)季刊に。不定期→季刊→隔月→月刊→季刊、と不思議な変遷をたどっている雑誌です。が、不思議なことに経営的なやばさを読者(解き手)に感じさせません。というのは贔屓目か。懸賞をメインとしない唯一のパズル雑誌。解いての楽しさはかなりのものかと。ただし、特定の(契約した)書店にしかおいていない雑誌です。

 北村薫「六の宮の姫君」。これは記述内容に浪漫を感じることができるかどうか、ということがすべてだと思うのですが、残念ながら私には感じられませんでした。芥川全集くらいなら目を通しているのですが、その結論が「あ、あわんわこれ」だったしねえ…。しかしこれを「ミステリ」といって売るのはどうかなあ。

9/08

 北村薫の初期3冊読んでます。なるほど。

8/19

 さそうあきら「神童」全4巻。どうも昔ヤングサンデーで連載していた「虫2タマガワ」の印象が悪くて、評判のきわめてよかったこの作品もいままでふれていませんでした。いや、読んでみてよかったです。ラストのいきなりな展開もなんだか納得させられてしまった。「そういう」音楽もありなんですね。想像さえしませんでした。

 「ハサミ男」。メフィスト賞受賞作品で、ストレートに面白いと思ったのは久しぶり。細かい描写から大仕掛けまで、すべてにきっちりとはまっています。ビューティフル。ただし、続編禁止。ぜったい、ここで終わってね。

8/09

 1月強あきました。我ながら中途半端なWEBですね。さて、この1月でおもしろかったもの。

「プギーポップ ペパーミントの魔術師」はいいね。キャラクターと世界観、ばっちり。

「ウロボロスの偽書」は…メタレベル、というのは既に形式となってしまっているんだな、と。そこで何を書くか、何だけど、序盤の討論が一番おもしろかったりして。小説世界の解体自体に文章をもっていかれる後半はどうでもよかったです。そこはそれ…

「邪馬台国はどこですか?」はネタの拾いかたとまとめ方に脱帽。歴史の「トンデモ」的解釈を詭弁と実話を含めて蕩々と語ってくれます。といっても、かなりの部分は「まっとうな」原点にもとづいているんだけれど。どこまでオリジナルかはわからないけれど、抜群に楽しめました。

北村薫「スキップ」もいいです。ちょっと前に書いた「秘密」とメインとなるネタは近いんだけど、ずらし方で変わりますね。はい。

7/12

 森博嗣「そして二人だけになった」。ハードカバーでちと高いのは何ですが、持ち味が出ていて十分に楽しかったです。やっぱり、天才科学者、閉鎖空間というとそれだけで魅力的です。

6/30

 このところ読まなかったことにした本が多かったのですが、最近あたりが続くようになりました。東野圭吾「秘密」はハードカバーで買った甲斐がありました。人格移動、という使い古された、と思い込んでいたネタも、こんな切り口、見せ方があったんですねえ。お見事。ストレートに感動しました。いやあ、最初に読んだ単行本が「名探偵の掟」だったからって見切らなくて良かった。

 母の心が娘に転移し、母は死ぬ、という設定だけでは何でもないのだが、そのスパンを長時間にすることでこれだけ深い話にできるのか、と。

 もうひとつ。村上春樹「スプートニクの恋人」。これもおもしろかったです。「ねじまき〜」がいまいちぴんとこなかった私としては何はさておき嬉しい。いままでの小説とどう違うか、という意味では「あんまり違うという印象をうけなかった」のですが、(私の期待する)いつも通りの世界があって嬉しかったのです。だから、決して傑作ではないともおもってしまうのですが、でも。

6/25

 バトル・ロワイアルは傑作です。おもしろかった!

 しかし、これだけ楽しんだのにタイトルを3週間近くまちがえてアップしていたのは情けない。>>自分

6/20

 久しぶりに高熱を出して寝込んでしまった。やはり39度オーバーで下がらないとつらいね。会社も3日休んでしまったし。ああ、明日以降のこと考えたくない。

 「じゃじゃ馬グルーミンUP19」。相変わらず読ませます。すれ違いの書き方と、解決の仕方がいいっすね。森雅裕、続けて読んでます。「椿姫を見ませんか」は特に良かった。こういう魅力的な屈折したカップル(なんて表現だ)は好きです。「ベートーベンな憂鬱症」も読みました。

6/10

 さて。すっかりさぼりぐせがついた。DDRとかFFVIIIとかをやる暇はあるというのに。FFVIIIは今更ですが、やっぱり凄いですね。あの資金とパワー。お話としてもVIIよりは圧倒的に凄いし。日本を代表するRPGに、いきなり「学園」を持ち込んでしまう、というのはとんでもなく凄いことです。はい。女神転生じゃないんだし。ああ、この日記の趣旨から逸脱していく。DDRは楽しいです。単純に体力が付いていかないのでパラノイア、ノーマルでもどうあがいても踊れそうにないですが。

 本題。

 森雅裕「いつまでも折りにふれて/さらば6弦の天使」ワニブックスは久しぶりにおもしろかった。「人が死ぬ」ということと「その解決」は2の次として、小説として描写や会話がとても楽しめた。こういう本を読むと何より嬉しい。しかし、レジで1800円、というのは驚いた。

 新宿鮫、全部読みました。楽しめました。1作目が一番楽しいのは何ですが。成田美奈子「NATURAL」はいいですね。相変わらず。このキャラクターの魅力は何にも代え難い。

 BASARA26(田村由美)はいけません。こういう「バースデイ」みたいな作品をよむと悲しくなる。ああああ。遊ぶなら力一杯遊んでみせてほしい。

 このところ読まなかったことにした作品が多かったんだ、そういうこともある、ということで。

5/31

 大沢在昌の新宿鮫シリーズ、読んでます。田村由美「BASARA26」。ない方がよかったな、正直。

 太田忠司「銀扇座事件 上・下」。まあ帯で結構あれこれ書いてしまっているので、暗示的な表現はここでもしてしまえ。「上巻のほうがおもしろいというのはまずいよなあ」というのが正直な感想です。しかしこのシリーズ、初めて読んだので、あまりまっとうな感想ではないのでしょう。

5/19

 有栖川有栖「双頭の悪魔」。すっかりこの文章になじんでしまいました。パズラーとしてはおおすげえ、というほどでもないんだけれど、読ませます。

 森博嗣「黒猫のデルタ」。ベタベタなタイトルだ、とタイトルを聞いた瞬間思った私はなんなのだろう。いわんとすることは理解できるんだけど、それがおもしろいかどうかは別問題。

 帚木蓬生「ヒトラーの防具」。上下2分冊。ナチスドイツ時代のドイツを、ドイツ駐在の日本人、という視点から見つめた作品。感情的にならない描写が良い。

5/9

 富樫義博「幽遊白書1〜19」、いまさら買ってみました。まあおもしろかったんだけど、「あんなに売れたのはなんだったんだろう」と思ってしまったのも事実。あくが強いんですよ。私の感覚では。ときどきものすごくいいシーンがあるんだけれど。

5/6

 やはり続きませんな。10日以上あいてしまいました。

 さて。上遠野浩平「ブギーポップは笑わない」「ブギーポップ・リターンズVSイマジネーターPart1,2」「ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」」電撃文庫。ああ、長いタイトル…。えっと。毎度おなじみの表現ですが、作品に漂う空気が好きです。読み終わってもわからない部分がたくさんある、でもそれはそれでよし、とできてしまう。

 しかしこれだけ「ブギーポップ」の描写が少ないのに、その存在感が際だつのは上手いなあ。はい。いわゆる「お約束」のはずし方も見事です。見事なまでに「お約束的シーン」はありません。あとですね、「あとがき」も作品の一部として成立してますね。読み終わっても全然わからない、という意味で。

 こういう不安定な描写で「読ませてしまう」、このシリーズ、好きです。

 「鴉」麻耶雄嵩。「東京創元社98’本格ミステリベスト1」というわかりやすいレッテル。「盲点を衝く大トリック」という惹き句。まあそういうイメージで読みましたが、私にとってはあんまり謎解きそのものはインパクトがありませんでした。

 裏表紙に書いてあるからいいかな、と思うけど、「逆転と驚異の大結末」。こういう逆転、というのはよっぽど鮮やかに決めてくれないと何ですね。あんまり鮮やかさを感じられませんでした。あとね、「メルカトル鮎」というのがこの作者の「お約束」だというのを知らなかったのも痛かったです。で、知らないとすんごく不自然。

 で、そのお約束を「翼ある闇」で知りました。知りましたとも。だけど、どうもこの作者の方向性と趣味があわないみたい。さっき書いた、「空気」がしっくりこないのです。

 新井素子「ネリマ、大好き」。Bizseek経由で購入することができました。ファンなら。という身も蓋もない本か。個人的には「ミザリー」についての記述がおもしろかった。

 西澤保彦「瞬間移動死体」。瞬間移動という超能力を前提としたパズラー。といってもれいによって謎解きはシンプル。ついでに犯人の動機もあまり問題にならない。そういうわけで、醍醐味の中心は事件に巻き込まれた人たちの描写にある。それなりに楽しめたのだが、「チョーモンイン」シリーズを先に読んでいると、そっちの方がいいなあ。

 島田荘司「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」。富樫義博「HUNTERxHUNTER5」。細野不二彦「ギャラリーフェイク15」

4/24

 泡坂妻夫「乱れからくり」角川文庫。日本推理作家協会賞、というわかりやすいキャッチコピーがついてます。「からくり」というギミックのつかいかた、舞子や敏夫というキャラクター、基本的に悪くないし、解決は楽しかった。

 だけど、冒頭の「隕石の衝突で…」の下りが、あまりにもリアリティがなくて、それが最後まで引っかかってしまった。どうも「隕石の衝突」を「たんなる突発事故」として受け止められなかったようです。

 ミラン・クンデラ「存在の耐えられない軽さ」集英社文庫。あ、これは「ブンガク」ですね。ところどころにいい描写や記述はあるんだけど、お話の基本ラインに興味がないや私。そんなわけで、手に取った私が悪い。

 西澤保彦「念力密室!」「幻惑密室」「実況中死」講談社ノベルス。最初は「チョーモンイン」という言葉の響きや、神麻(かんおみ)さんというキャラクターに違和感を感じていたが、「念力密室!」を読み終えるころにはすっかりなじんでしまいました。「超能力がある上でのパズラー」というのも楽しいし。こういう、SF的設定を日常に持ち込むパターンは基本的に好きです。

 しかし、シリーズものにしては、短編集、重いなあ。楽しいけど。

 和月伸宏「るろうに剣心1〜25」ジャンプコミックス。古本で安かったんで一気読みしてみました。おもしろいじゃないですか。改めて読み返すと。思っていたよりも。しかし、コミックスでここまで裏話を暴露してしまっていいのだろうか。暴露してもらってもあんまり嬉しくない私としてはちょっと気になります。

 柊あおい「キャンパススケッチ」マーガレットコミックス。いやあ、この人の漫画の世界の空気、ほんとに好きだわ。

 日渡早紀「未来のうてな11」花とゆめコミックス。最終巻。やっと終わりました。しかし、一気読みしてもまだ…なのはつらいなあ。はい。

4/15

 東野圭吾「パラレルワールド・ラブストーリー」。あ、これ話としては好き。記憶の混乱とそれがぱっと開けて解決する、という意味で。んでも、ちと話が混濁してしまっているかな。ラブストーリーとしてはちと何だし。オープニングの出会いの記述のうまさに比べてその後の展開がうまくないなあ。

 法月倫太郎「二の悲劇」。ありふれた(小説上の)殺人とありふれない(小説上の)背景。「きみ」という二人称による部分の記述が楽しめなかったのでちょっと読んでいてつらかった。様々な意味での被害者に共感できなかったし。

 岡嶋二人「眠れぬ夜の殺人」。帰り道、絡んできた酔っぱらいを突き飛ばして殺してしまった――てなところから始まるストーリー。それが思わぬ展開を――という話なのだが、それを解決する「組織」の設定と行動の美学自体になじめなかったのです。

 有栖川有栖「スウェーデン館の謎」。ああ、やっぱりこの人の文章、読んでいてなじむな。安心します。例によって(?)トリックには無茶があるけれど。

 高山文彦「いのちの器」ふたばらいふ新書。臓器移植だの尊厳死だの、ひとの死にまつわる生き方の話です。あ、これは「うまいな」、と思いました。本人の考えを正面に出さずに、あくまでも事例から主張を浮き出させるその手法において。その主張には正反対の意見ですが。ま、とにかく、「移植をしない」という決断をあまり美化しないでほしいなあ。それはそれで一つの選択として認めるけどさあ。

 楠桂「人狼草子7」ウイングスコミックス。やあ。完結ですか。長かったですねえ。

4/7

 歌野晶午「さらわれたい女」。「私を誘拐してください」という依頼が便利屋に来る。様々な視点が切り替わりつつ話が進む。そして、全体の構図はひっくり返る、とある意味で予定調和の作品。ま、楽しめましたけれど。

 有栖川有栖「ロシア紅茶の謎」講談社文庫。切れ味の悪くない短編集。クイーン、というよりホームズの香りがするのは気のせいでしょうか。ま、ちょっと論理的帰結、とは言い難い決着の付け方です。

 浦沢直樹「MONSTER11」。ああ、10巻間違えて2冊目買っちゃった、というのは余談として、相変わらず楽しめます。ああ、早く完結したものを一気に読みたい。

3/31

 森博嗣「冷たい密室と博士たち」文庫版。ああ、ノベルスと文庫版両方買うなんて。

 江国香織「きらきらひかる」。ああ、恋愛小説なのですか。これ。そういうレッテルにはうなずけませんな。要するにだれにも共感できなかったと言うことです。でも、最近はっきりしたストーリーの本ばかり読んでいたから、こういうもどかしい話もおもしろかった。

 有栖川有栖「46番目の密室」。ああ、有栖川氏の物語の空気、好きになってきた気がする。パズラーとしてはまあ、ふつう、なんだけれど。はい。

 法月倫太郎「頼子のために」。手配がおもしろかった。この手の、最初に手配があってそれが意外な方向に転がる、という話で手配がおもしろい、というのは貴重です。

3/25

 いろいろ、読みました。

 「銃夢1〜9」木城ゆきと。脳味噌以外がサイボーグの人たちがたくさん登場するSFです。楽しかった。

「ぼくたちの洗脳時代」「天才柳沢教授の生活13」「バガボンド1〜2」「ぼくんち3」「聖伝1〜10」「やけっぱちのアリス」「じゃじゃ馬グルーミンUP」「GS美神35」「H229」「月光ゲーム」

3/17

 福本伸行「アカギ1〜9」竹書房。「天」にも登場する天才「アカギ」の若い頃の話。改めてまとめて読み返すとこの人ならではの「すごみ」は薄いかな。敵がどうも「やられ役」という感じがしてしまってね。

 楠桂「山田君が通る1〜3」マーガレットコミックス。あ、これ楽しいわ。とりつかれ体質の山田君を主人公とするラブコメ。「八神くんの家庭の事情」に近いのりがあって、楠氏の作品ではone of bestかな。んで、こっちも好き。

 楠桂「愛はかく語りき」「続愛はかく語りき」マーガレットコミックス。「漫画家」である主人公の恋愛から結婚までを、あまり現実から逸脱することなく書いた、半自伝的漫画。まあ、90%くらいフィクションだとは思うけど。2冊ともエンディング、いいです。

 スティーブン・キング「ミザリー」。キング初体験。えっと。あらすじは知ってました。んで、怖くはなかったです。小説として楽しかったか? うーん。翻訳が鼻につくのは気のせいか。

 東野圭吾「白馬山荘殺人事件」。ストレートに館でおこる殺人の推理小説。

3/12

 ケイ・ジャミソン著/田中憩子訳「躁うつ病を生きる」新曜社。大学病院の精神科の医者である著者が、自らも躁うつ病であることをカミングアウトし、躁うつ病の実体を赤裸々に書いた本。よんでいてつらくなるほど正面から躁うつ病の症状がたんたんと書いてある。

 エピローグで、「躁うつ病になるか選択できたとすればどうするか」という問いに対して、著者は「躁うつ病になる」ことを選択する、という。それが一般の病気との差異なんだろう。といっても、その気持ちを想像することは私にはできないが。

 奥田昭則「五嶋節物語「母と神童」」小学館。神童とよばれた五嶋みどり、神童と呼ばれている五嶋竜の二人の母である五嶋節の半世紀である。彼女に対して貼られているレッテル、「教育ママ」というステレオタイプなイメージの崩し方がとてもうまい。

 しかし読み応えのある半世紀である。思わず五島節を養護したくなるような人生であるが、変に同情を寄せるのはかえって失礼になるに違いない強烈なキャラクターをもっているのが感じられる。強い。

 エピソードの選び方――とくに切り捨てかたが抜群にいい。突然時系列がおかしくなんたり、あとがきにあるとおり話がぼけてきたりするのだが、それがわかってしまうにもかかわらず欠点とは感じられない。

 小林よしのり「ゴーマニズム宣言6」小学館。「戦争論」を思いっきり否定しているので、素直に楽しめなくなりました。この巻でも「戦争論批判」批判をやっています。まあ、その批判批判じたいは筋がとおっています。

 でも、私は戦争を無条件に否定するが故に、「戦争を否定する」ということにふれない「戦争論」を認められません。

  なぜ戦争を否定するか? 「殺されるから」ではない。「殺すから」である。そして、「殺すことを強要するから」である。

 「国家のために自己を捨てる」ということと、「国家のために他人を殺す」ということは別問題。また、「国家のために他人を殺す」人を否定するな、ということと「おまえも国家のために他人を殺せ」、というのは別問題。

 でね、罪の意識なしに「正義だ」と認識して人を殺すことはもはや犯罪です。それを認めるのであれば、「原爆を落とす正義」もみとめなくてはならない。

3/08

 山下和美「天才柳沢教授の生活1〜12」モーニングコミックス。ある種の大学教授の生活をそのまんま書いた漫画、です。じっさいにこういう教授に接したことはありませんが、漫画のキャラクターとして実にいい。

 個人的に好きなのは10巻、最後のエピソード。まあ行ってみれば「いい話」なんだけど、その話のもっていきかたがうまいなあ。柳沢教授の「憎しみ」という感情の表現も完璧だし。

 吉富昭仁「EAT-MAN1〜8」電撃コミックス。メディアワークス関係の漫画、よむのはじめて。ネジを食う冒険屋、ボルト・クランクの話。ストーリーの組立がとても巧みで、たのしめる。とくに、複線の拾いかたは最高。2巻もよめば、複線の提示方法は完璧にパターンであることがわかるんだけれど、回収されるたびに心地よい満足がある。

 ときどき、背後の大きな設定にふれるような話があるけれど、そちらはいまいち。一話完結型の話のほうがいまのところ圧倒的にいいな。

3/07

 原秀則「さよなら三角1〜17」小学館サンデーコミックス。安かったので買ってみました。ラブコメ+サッカー+高校生活+受験+絵そのたもろもろ、というか、いきあたりばったり。今、この年齢で読むのはちょっとつらいなあ。主人公に感情移入しようがないほどのご都合主義だし。まあ、昔の思い出、といったところですか。

 なかじ有紀「あなたがパラダイス」。「ハッスルで行こう」「隣はSCRANBLE」の番外編。いやあ、脇役の救済ですねえ。全力で。しかし、ウェディング姿まで書きますか。すげえ。楽しすぎ。もうね、作品に漂う空気だけで許可。

 田中芳樹「夢幻都市」講談社文庫。リゾートで、「狼」がおそってきます。主人公は作家とその娘です。リゾートの経営者はこのひとならではの相変わらずのキャラクターです。しかし、地の文、うまいよなあ。とにかく、読ませる。内容ははっきり言ってぱっとしないのに、読ませる。やっぱり凄いね。

3/05

 島田荘司「眩暈」講談社文庫。御手洗潔シリーズ。冒頭、大きな活字の子どもの文章で始まる。解説にも書いてあるとおりダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」を思い出させる始まり方。

 こういう特殊な文章はそれ自体をよむのがけっこうつらい(楽しめない)だけに、「おおっ」という感動をどこかで与えてくれないと不満が残る。で、これはどうだったか、というとあんまりぴんときませんでした。これならまだ「占星術殺人事件」の冒頭のほうがいいかな。

 岡嶋二人「解決まではあと6人」講談社文庫。短編を積み重ねて最後にまとめあげる長編。とりあえず、読める。読んでいて気持ちいい文章。こういう全体の構造でたのしませる作品としてはいたいことに、最後の「解体」であんまりすっきりできませんでした。

 歌野晶午「白い家の殺人」。久しぶりに読んだストレートな推理小説。「殺人とその解決」以外の描写をほとんどせずに、純粋に事件の話だけ。なんか新鮮な気がした。んでも、今の気分ではそれがあんまりプラスに働いてくれないな。

 やっぱりキャラクターの魅力とか、脱線した話のおもしろさ(しかも、それが解決に絡むと嬉しい)などを期待してしまうな。なんだかそのまま「金田一少年の事件簿」になりそうなお話でした、っていうのはネタばれでしょうか。

 なんてことだ。1つもほめてない。

 桂正和「I''s(アイズ)9」。相変わらず絵は抜群。話は無理矢理。以上。

3/03

 村上春樹「約束された場所で」。雑誌連載時は「ポストアンダーグラウンド」。全作「アンダーグラウンド」が地下鉄サリン事件の被害者のインタビューであったのに対して、今回は加害者側であるオウム真理教の信者あるいは元信者に対するインタビュー。

 「アンダーグラウンド」では読んだ私が気が滅入るほどのリアリティをもってせまってきたのだが、今回はなんか、話がすべっているというか、リアリティを感じない。それは、インタビューイーである信者がそうさせるのか、村上氏の「ある程度話の方向性をこちらで誘導する」というスタンスの違いがそうさせてしまったのか。すくなくとも、印象、という意味では格段に弱い。

 信者に共通する「アクの弱さ」というのは重要なファクターだと思った。

 にしても、「地下鉄サリン事件は否定してもオウム真理教は否定しない」というのが信者たちの最大公約数的見解のようだ。まあ、さもありなん、とはおもうが。実のところ、「戦争は否定しても、それを行う国家は否定しない」というのと同列の論理だとおもってしまうから。もちろん、そういう論理を私が肯定するわけではないが。わたしはあらゆる戦争と殺人を否定します。と、これは別の話ですね。

3/01

 島田荘司「水晶のピラミッド」講談社文庫。御手洗潔シリーズ。ディッカとミクルの話、タイタニックの船上での話、そして御手洗の登場する現在が平行して語られてゆく。タイトル通り、ピラミッドに関してこの3つはクロスするわけだが、クロスの仕方はいまいちぴんとこない。それぞれはっきり文体を変えているのもあって、独立の3本の話、という印象が強かった。とくに、ディッカとミクルの話の「ですます語り調」は違和感があった。

 一気に読む程度にはおもしろかったです。ミステリとして…はどうでもいいや。はっきりとぼろがあるような気もしますが、もともと解決にあまり期待して読んでいたわけでもないので、ま、いいかと。昔の作品のほうが解決には期待できましたね。

2/27

 奥村徹「緊急召集」河出書房新社。聖路加病院の救急医だった著者が、地下鉄サリン事件の当日の病院の様子をつづった1章が抜群に出来がいい。現在の救急医療に対する考察/提案を記述した2〜3章の指摘には頷けるところが多い。本としても非常におもしろかったし、現実に考えさせられる。人に勧めたくなるような本。

 岩明均「七夕の国4」小学館スピリッツコミックス。これで完結。うーん。カタルシスがえられなかったよお。広げた風呂敷のわりにラストがあっけなかったうえに、いまいち収まりませんでしたな。

 ほうっておいてもベストセラー、鈴木光司「バースデイ」角川書店。「リング」「らせん」「ループ」3部作の外伝的なもの。この3冊を読んでいないとわけわからないし、ネタばれになるし、いいことはないです。んでもって。この作品、読めばまあ読めるしおもしろいんだけど、やっぱり蛇足です。

 帯で作者が自ら書いているとおり、「切り捨てられたフイルム」です。これを公開してしまうのはやっぱり三部作を傷つけるなあ。もったいない。全く違う話として短編にすればいけそうな話だったのに。お金にはならないけどさ。

 野火ノビタもとい榎本ナリコ「センチメントの季節1〜3」小学館。話題になっていたので買ってみた。絵/ストーリーに山本直樹の空気を感じるなあ。悪い意味で純文学の香りがします。こういうノリがすっごく好きな人もたくさんいると思いますが、わたしはあんまりひたれませんでした。そういえば、セックスに始まる性行為をメインの題材とした文学/漫画で、おもしろいと思ったことってあんまりないなあ。村上春樹「ノルウェイの森」は大幅に違うし。好みの問題ですかね。

 そのほか小花美穂「せつないね」「白波の幻想」白泉社、李啓充「市場原理に揺れるアメリカの医療」医学書院、現代洋子「ともだちなんにんなくすかな1」、山下和美「天才柳沢教授の生活1−9」モーニングKC。業田良家「ヨシイエ童話7」ヤンマガKC(6巻がみつかればこれでそろう!)


2/21

 養老孟司「涼しい脳味噌」「続・涼しい脳味噌」文春文庫。元東大医学部解剖学科教授(現名誉教授)によるエッセイ。死体がいつも身近にあるという特殊な環境での思いが素直にかかれている。共感のもてる内容。

 現代洋子「おごってジャンケン隊1・2」「ともだちなんにんなくすかな2」。昔のマーガレットコミックスの作品(東京バラッド、右向け左!など)を思うと作風がまるでかわりましたね。現実にいるキャラクターのおもしろさを紙の上に移すのはうまいと思います。

2/17

 「ドクラ・マグラ(下)」読みました。えっと。かかれた時代を考えると凄いです。逆に言うと、ムニャムニャではありますが。んでも、おもしろかったです。しかし、こういう本に「推理小説」というレッテルを貼るのはどうなのだろう? といつもの疑問が浮かんでしまいました。精神病(と思われる)患者の一人称による小説、でよさそうですね。しかし某氏の本による免疫はつよかった。

2/15

 「ドグラ・マグラ(上)」を読みました。いまのところ、とてもおもしろいです。「やたらに読みにくい」という評判に反して、あっさりと読めました。某氏の本で免疫ができているからでしょうか。某氏、とかくしたのはネタばれ防止ですが、あまり効果はないかもしれません。

 「チグリスとユーフラテス」のあとがきを読んで。やっぱり、新井氏、天才だわ。

2/14

 おととい購入した「チグリスとユーフラテス」、読みました。すばらしい。実に7年ぶりの小説でしたが、堪能しました。

2/12

 今日は電車の中では電撃PSとファミ通を。待望の新刊新井素子「チグリスとユーフラテス」集英社を購入。もったいなくて電車では読めない。同時に縁がなく今まで読んでいなかった夢野久作「ドクラ・マグラ上下」角川文庫を購入。

2/10

 河合隼雄/梅原猛「小学生に授業」小学館文庫。これは、国際日本文化センターの教授陣9人が小学生に1時間だけ授業をした講義録。分析も何もなしで、ただ授業内容があるだけ。単純にドキュメンタリーとしては、退屈でした。すくなくとも、「この授業を聞いてみたい」とは思えませんでした。そういう意味では、サージ・ラング「さあ、数学しよう」など、ほかにおもしろい本はたくさんありますね。

 2/3に書いた、物語の最後ですぱっと時間軸が変わる(一気に月日のたつのが早くなる)という話。時間軸の換え方で、うまいな、とおもったのが羅川真里茂「ニューヨーク・ニューヨーク」。うまく時間軸をさっとかえて、綺麗なエンディングを見せてくれました。ホモの純愛物語なのですが、なかなかです。

2/9

 西原理恵子&群よう子「鳥頭対談」。前編、子どもが稼ぐお金を片っ端から使ってしまう親の愚痴です。私には笑えません。怖いです。「夢にでるぞお」っていうイメージ。凄いとは思うけど。氷室冴子「冴子の母子草」を思い出しました。夫婦喧嘩は〜とはいいますが、親子喧嘩はもっといりません。もういりませんったらいりません。

 火浦功「大ハード。」角川スニーカー文庫。まあ、なんていうのか。相変わらず。上記氷室冴子氏だったかな、「あの力の抜き方はただごとではない」。本当に。この人にしてはクオリティは高かった、気がする。しかしなぜ私は「火浦功伝説」を買ったのだろう。

2/8

 清涼院流水「コズミック」読み終わりました。メタ的要素を含む小説はどうしても「凄い」が精一杯の評価。「おもしろい」に昇華した作品はなかなかないです。中村靖彦「コンビニ ファミレス 回転寿司」文春文庫。別に小説ではありません。

 一番よかったのは、富樫康隆「HUNTERxHUNTER(ハンターハンター)4」集英社、ですね。安定しておもしろいです。はい。

2/5

 ファミ通を読んでますが、これは対象外。清涼院流水「コズミック」を読み始める。半分くらい進んだところ。まだなんともいえない。今日中に読み切ってしまわないと眠れない、というところには至っていない。もちろん、そういう本だけがおもしろい本ではない。

 順番が狂ったが森博嗣「数奇にして模型」の再読終了。一回目の印象はそれほどよくなかったのだが、読み返すとこの作品も楽しかった。かなり深遠な問題が語られてるんですね、これ。「模型とはなにか?」

2/3

 週間サンデーなど。石渡治「LOVe」最終回。いきなり時間軸がすぱっと変わる、というのは漫画の最終回に少なくないパターンだが、この終わり方はちょっとすっきりしないなあ。期待していたシーンをことごとく省略されてしまったからなあ。しかしたくさんのキャラクターをあっさり大変な目にあわせてますね。うん。外伝がいくらでも描けてしまいそうです。んでも、良い漫画でした。(単行本ではなく)週刊誌で読んで楽しい、という基本が守られていたし。

 最終回、同じパターンなら「帯をギュッとね!」のほうが良かったです。ま、時間の経過の度合いが違うけど。

2/2

 シリーズの終わり方。主人公を殺すなりなんなりして、話を続かなくして終わらせるやり方。このままつづいてもいっこうにさしつかえないが、「これで終わりですよ」というキャプションによって終わる終わり方。単に続きがでなくなっておわる終わり方。だいたいこの3つですか。

 てなことを考えつつ森博嗣「有限と微少のパン」を再読。これは、この作品で終わりですよ、と作者が言っているから完結した、というシリーズ完結作。シリーズのおしまいを明言するのも、サービスの1つでしょうか。このお話でおしまい、といわれると非常に綺麗な終わり方だ思います。んでも、終わり、と明言されないとつづきを期待してしまう終わり方です。はい。

 それにしても、やはりこの作品は凄い。

 シリーズの終わり方、といって頭に浮かんだのは田中芳樹「銀河英雄伝説」。これは1話完結と言うわけではないから、ちょっとシリーズの意味合いが違うのですが、これもまたぴたっときまった終わり方だと思います。

 それにしても、どの本から読んでも本当にオーケーなシリーズって最近、少ないですね。基本的にシリーズものは、1話完結であっても、昔の作品を知っていると「より楽しめる」ものではありますが、「犀川&萌絵」シリーズはその度合いがとみに高い。京極夏彦氏の「京極堂」シリーズはもっとそうですね。私はそういうしかけ、大好きですが。

2/1

 鈴木みそ「オールナイトライブ3」購入。ルポ漫画、といえないこともないか。イメクラ、パチンコ、印鑑…。1巻のころにくらべるといまふたつ。森博嗣「今はもうない」再読。読み返すと楽しめる部分が多く、なかなかよかった。サービス、してますね。

 もう10刷をかるくこえましたね。乙武洋匡「五体不満足」。個人的にはどうでもいい本です。ああ、幸せな人なんだなあ、でおしまいでした。んでも、彼のお母さんはいいですね。「かわいい」という第一声を発するひとが、果たしてどのくらいいるのかというのが問題なのでしょう。まあ、この本に商業的価値がなくなるのがいい世の中なんでしょう。

 私の障害者に対する感覚というのは、「とくに深い思いはない」というところでしょうか。日常、いわゆる障害者に接する機会がありませんから。差別心や、変な同情意識はもっていないつもりではありますが、実は無意識にあるのかもしれない。もしかすると、「外人コンプレックス」とおんなじような「障害者コンプレックス」があるのかもしれない。わかんないですね。

1/30

 今日は本を5冊購入。うち漫画3冊。全部小学館。まずは元祖グルメ漫画雁谷哲/花咲アキラ「美味しんぼ69」。まあ、正直、買い続けているから買っている漫画です。それなりに安定はしているけれど。つぎは美術版ブラックジャックというか、なんというか、細野不二彦「ギャラリーフェイク15」。これはいいですね。戦争写真のエピソードなんか特に好きです。

 しかし、なんといっても田村由美「BASARA25」でしょう。これで完結です。これは、とってもよかったです。はい。今までのストーリーの積み重ねと「絵」が重なって、とても感動的に終わってくれました。満足。やっぱり、今の時期に成立した歴史物(っていうかファンタジーというか)だけのことはあります。正直、感動的なお話に素直に感動してしまうのは悔しい、というあまのじゃくな気分もなくはないが、やっぱりこういうのもいいですね。泣けました。

1/29

 前衛小説、というか何というか。「ストーリーと描写」以外のところに価値を求める小説、というものがあります。ひたすら言葉遊びをした、とか、特殊な書き方をした、とか。そういう小説は、わたしは「おお、すげえ」とは思いますが、残念ながら、大好き、というわけには行かない。

 なんといっても真打ちはジェイムズ・ジョイス「フィネガンズウェイク」。これは強烈。地口(だじゃれ)というかなんというか、ひたすらダブルミーニングをもたせた単語を――あるいはトリプル・クオドラプルミーニングをもたせたたんごをならべていって、その中に話が浮かび上がる…説明できない。たとえば、"natsrit"という単語があって、これはナイトシャツ(night shirts)と(トリスタンとイゾルデの)トリスタン(tristanをひっくり返したもの)だったりします。柳瀬直紀はこういう単語を「ジョイス語」といっていますね。世界で一番楽しんだのは日本語に翻訳した柳瀬尚紀でしょう。この本については、柳瀬氏の書いた「辞書はジョイスフル」を読むのが一番早く「頭では」理解できるんじゃないかと思います。ひたすら言葉と格闘した本です。しかし、私にとっては、作者の思いをトレースできないし、しようとも思えないので、つらいだけの本です。です。よくこの本が今日まで生き残ったな。それがすごい。

 はっきりとついていけるのは筒井康隆「残像に口紅を」ですか。最初からこの小説の世界では「あ」という文字が存在しません。話が進むにつれて、どんどん文字が減っていきます。と、わかりやすく過酷な制限ですね。これだと、読み手の私は筒井氏の苦労を共感しながら、感嘆しつつ読むことができる。そういう意味で、ジョイスにくらべると「わかりやすい前衛」ですが、私はこっちの方が好きです。

 まあ、正直なところ、柳瀬尚紀&筒井康隆「突然変異幻語対談」でも読んで、こういう言葉と格闘している人たちの狂気をかいま見た気になって楽しむ、というレベルの私です。でも、そういうレベルが高いことを、「うらやましい」とも思わないのもまた事実です。

1/28

 再読について。私は同じ本を何度も読みます。基本的に気に入った本は読み返します。昨日から読み返しているのは森博嗣「幻惑の死と使途」&「夏のレプリカ」講談社ノベルス。この2作品ははっきり1本の時系列に乗っかった話で、「幻惑」が奇数章、「レプリカ」が偶数章のみで構成されています。

 いきなりこの2作品を、「正しい順序で読む」というのは本のつくりからいっても想定されていないので、やはりここは別々に読んでから再読するのが一般的な方法でしょう。そういうわけで、この2冊は最初から再読が想定されていると思っています。

 で。再読すると。「同じ時系列に乗っているが故のしかけ」というのはあまりはっきりとはないのですが、それでも、「何を書いて、何を書かないか」ということによる現象の差、といったおもしろさはうまくでていると思う。

1/27

 いきなり何ですが、あらゆるネタばれが嫌な方はスルーしてください。

 いわゆる「ネタばれ(この単語も美しくないですね)」問題について。本の感想、というと必ずつきまとう問題で。どこまで許されるのか。「驚きのどんでん返し!」というだけで、すでにどんでん返しがあることがわかってしまう。十分それだけでインパクトは薄くなる。さて、そんな訳で山田風太郎「太陽黒点」廣済堂文庫。これはすごい。あらゆるところで「帯は読むな」「うしろのあらすじを読むな」と警告が。おもわず買ってしまいました。とりあえず、これらの「警告」の宣伝効果は抜群でありました。少なくとも、私が本屋さんでこの本を買った理由はこれらの警告でしたから。

 それで。本はおもしろかったです。はい。ただし、警告ゆえにやっぱりわかっちゃったんだなあ。これが。さて。それでも、この本を読んで楽しかったのは事実だし、私がこの本と出会えたおおもとをたどるとあのあらすじや帯の功績なんですね。んでも腑に落ちないところがあるのは事実です。読者に失礼なんですかね? 作者に失礼なんですかね?

 ネタばらしにもいろいろありまして。「ミステリー」として紹介するだけでもあるいみの「ネタばれ」ですが、現状ではふつう、それはOK。つまり、「説明のつく形で解決される」というお約束を教えることはOKであると。また、ホラー、SFといえば「合理的(といえる)説明がないかもしれない」という約束を教えているわけですが、これも問題ありません。

 しかし、「太陽黒点」の場合は、「この作品はミステリーである!」という時点ですでにまずいんでしょうね。すくなくとも、何も知らずに読んだカモ君はミステリーだと思わず読んだので、とても楽しかったそうです。そういう意味で、「ア○○○○○○」「オ○○○○○○」なんかとは違う次元のお話ですね。

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Akiary v.0.42