そんな体験をしたのも、もう4年も前の話。懐かしいことだ。この体験には僕のもろさが詰まっている。うんうん。
と、ひとり納得してもしょうがないので、語ってみましょう。
あれは4年前の冬でした。粉雪舞い散る本郷の駅。しずしずと歩く受験生。その中を歩くのは1年ぶりだと感慨に耽りつつ、歩いていくと、去年も見た光景が。
なんか脚色はいってます。
各予備校の講師たちが、配っていたのは合格鉛筆。ああいうものに勇気づけられる人もいることはいるので、そっとしといてあげましょう。
いつの間にか英語の試験が終わっています。この教科は苦手なので、いつも通り点数があまりありません。そういうことで、ここでは話題になりません。
さてさて、話はいよいよ本命の、数学の試験でありました。得意であるこの教科、目標点数は80点以上。気合いも入って一問目。いつも楽勝の「確率・統計」の問題です。
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解けない。
実は、「確率」の問題が解けなかった体験って、今までなかったんです。
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30分経過。
試験時間は120分です。6問あるのに、1問を解けないまま30分が過ぎてしまいました。
(落ちるかも)
禁句である発想が脳裏に。
瞬間、
どきどきどき。
(「パルス上昇! シンクロ率、40を切っています」)
(別に落ちてもいいじゃないか、冷静に)
どきどきどき。
どきどきどき。
気のせいかぼーっとしてきた気がします。
鉛筆を持っている手に感覚がありません。
部屋が暑い気がする。
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…
どうも本当に気分が悪いらしい。
(「駄目です! 反応ありません」)
ええ、手を挙げましたとも。
気分が悪いって。
まさか廊下にねっころがることになるとは思いませんでしたが。
「貧血ですね」
「あ、これが貧血なんですか。初めてです。」
「他の場所で受験させてもらえませんか」
「それはちょっと無理です」
というやりとりも、廊下にねっころがったまま。
俺は廊下に寝に来たんじゃない
という憤りを感じる余裕なんか、すでにありません。
「ああ、これが貧血という物なのか」
ということを思い、口にも出したような気がする。
涼しい風に当たってしばらくして、
どうやら心臓の鼓動も安定してきました。
そうですね、そとで受験できないなら、教室に戻るしかありません。
試験時間は、あと60分。
教室に戻って。
くるくるくる。くるくるくる。
なんか、鉛筆回してた記憶はあるなあ。
(何も考えられない)
試験時間は終了です。
さすがにこれではなすすべがない。
「今年も、後期試験か。」
という思いをかみしめながら帰途につきました。
還ってから、家族には、「貧血起こして倒れたから、前期はもう駄目でしょう」ということをしゃべったんだと思う。あんまり覚えてないんだけど。
翌日。まだ入試は続きます。気分はすっかり模擬試験。
昨日落ち込むだけ落ち込んだから、結構気が楽でした。
まずは国語をさらっとかたずけました。
次。最後の試験、理科です。理科では物理・化学・生物・地学のうち2つの選択です。僕は物理・化学を選択していました。化学が得点源で、物理はまあ、それなりに。という方針でした。
結論から言ってしまうと、120分の時間中、90分で終わってしまいました。普段は、120分でも絶対に終わらないのに。うーん、ハイな気分で、ある意味ものすごく気楽に受けたのが功を奏したのでしょうか。
何はともあれ、後期試験に向けての勉強です。
結構まじめに勉強していました。
が。受かっちゃったんですねえ。
掲示板の前で10分は呆けていたと思います。
思いっきり気が抜けました。
どっちだったのかは、今もって分かりません。
まあ、どっちでもいいでしょう。今となっては。
当時の検討では、2、も充分にあり得るという結論に達した。英語50点、数学10点、国語60点、理科100点で220点。これだけあれば足りるだろう、と。つまり、これで数学をいつも通りとれていれば、理科3類も不可能ではない、と。この計算をしたとき、「ああ、理3生もふつうの人間なんだ」と心から思いました。これはまた別の物語。