第64回「少数派の憂鬱」(00.01.03)

フランス語の数詞が20進法を捨てられないように、優れたやりかたが一般に普及するとは限らない。一方、フランス語の数詞になれてしまった人にとっては、たとえそれが理論的により優れた方法であることが分かっていても、いまさらスタイルを変えることはできない。

※たぶん、一番優れているのは完全十進法準拠(1〜9まで覚えていれば、あとは十、百といった位どりとの組み合わせでOK)で、3桁ごとにまとめる(万、億、兆ではなく、thousand, million, billion)方式だと思う。ただ、「3桁ごと」のほうはSI単位系に毒されているからかもしれない。

慣れぬ前ふりをするのはよくない。さっさと本題にはいろう。

日本語入力方法である。まあふつうに考えて、ローマ字入力派が圧倒的多数を占めるであろう。そしてJISカナ入力が1割くらいか。だれでも知っているのはこの2つの入力方式までだろう。あとは「その他」である。

私は「その他」に属する入力方式では一番メジャーな親指シフト入力をしている。もう10年くらいになるだろうか。親指シフト入力は、もともとワープロ専用機"OASYS"で採用されていた日本語入力方式で、1回のキー入力でかな一文字を入力する。「右親指シフト」「左親指シフト」との同時打鍵によって、一つのキーで3つの文字を入力することが出来る。それによって、無理な指使いをすることなく日本語の入力が可能になる。

……こういう説明をすると幾分ややこしいことは否定しない。ただ、ローマ字の方が本質的にはややこしいものであることは了承してほしい。

まあふつうに考えて、入力の効率、なにより「疲れない」ことを念頭に置けば、親指シフトはとても優秀な入力方法だ。また、「覚えやすさ」も、客観的な指標こそないがそれほど馬鹿にしたものではない。すくなくとも、数少ないサンプル(2件)では1週間でそれなりのタイピングが、2週間でローマ字入力よりも快適なタイピングが出来るようになった。

しかし現在、親指シフトは利用するための敷居が高い。すくなくとも、標準で親指シフト入力が出来る環境をそろえるのは難しい。たとえワープロ専用機(これ自体滅びかけている)であっても。

まあそれでも、ソフトウェアエミュレートをするか、1万円以上かけて専用キーボードを買うか、という選択が可能であることはありがたい。前者の場合は、スペースキー近辺の適当なキーを親指シフトキーとして使う。単独打鍵ならそのキー本来の働き、同時打鍵なら親指シフトキーとして働く。

理想をいえばJISカナにとってかわるか、それと並列になることだが、それは厳しそう。

私としては106キーの配列が変わってくれると嬉しい。スペースキーの横、ではなくて下に「変換」「無変換」キーがきて、スペースキーが半分に分かれて、左側がBackspaceか何かになれば完璧。この変更はローマ字入力者にも有効だと思う。

それ以外のキー入力メソッドに踏み込むとなかなかたのしい。「それ以外」はそもそも専用ハードがあったこともほとんどない。すべてソフトウェアエミュレーションによる方式だ。まず常識的なのは、「チョイ入力」か。これは、「ローマ字入力」のために最適化したキーボード配列だ。両手でも右手でも左手でもテンキーでも入力できる柔軟さがよい。

親指シフトの絶対的な弱点として、「片手での入力がほぼ不可能」というものがある。電車の中などでこの欠点は痛感することができる。そういう視点から見ると「チョイ」はなかなか魅力的だ。

そしてマニアの領域として「超絶技巧入力」がある。これはとんでもない。数ストロークで、漢字を含めた日本語を直接入力してしまうのだ。ここまでくると笑うしかないが、身につけてしまえば確かにその人にとって最強であろう。

まあ、昔は写植とほぼ同様のスタイルの入力メソッドがあったので、それに比べれば……

<参考リンク>増田式キーボード学習法

……と、話がそれたまま終わるんですが、なぜ「憂鬱」ってタイトルをつけたのか考えていたら、くだらな随想を見て納得。影響されやすいな……


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