ガンパレード・マーチというゲームがある。発売前の評判はほとんどなく、インターネットや電撃プレイステーション（雑誌）の強力な後押しを元に18万本というそれなりのヒットを納めたものだ。
そういう評判があることもあって購入したのだが、長いこと放置されていた。このゲーム、分厚いマニュアルがあることもあり、ある程度読んでおかないとゲームにならない。それを知らずに30分で投げ出して、マニュアルを読んで「ああ、そういうゲームか……と思いつつ放置されていた。
最近そういう風に「評判がいいから」何となく買って、何となく放置されるゲームが多い。「ガンパレード・マーチ」を買ったときには、同じような理由で「シスタープリンセス」「東京魔神学園剣風帖繪巻」と同時購入までしているが、すべて放置されている。参考までに「シスタープリンセス」は兄のリクエストである。いちおう言い訳をしておこう。世間的にはとてもとても恥ずかしいソフトらしいので。
そういう状態であるのだが「電撃ガンパレード・マーチ」は買っても良いな、と思っていた。「これを買えばやるかもしれない」というのと、こういう、明らかに編集者が楽しんで作っている（じゃなきゃ直販のみ、なんてスタイルで売らないって）本はたいてい面白いからね。そこに「ナイスゲームズ」を読んだ兄が「ほしい」という後押しをして、購入することになったのだ。ちょっとした事件がここで起こる。
赤坂の某郵便局の窓口で振り込みをしたところ、「オタク臭ただよう」という言葉のイメージを具現化したような兄ちゃんが嬉々とした口調で、
「ガンパレはじめたんですか？ いいですよねあれ」とほざく。
郵便局の人間がこともあろうに客の郵便物の内容を見た上で口を出す、という現象が信じられなかった。それとも郵便振り込みの通信欄には「通信の秘密」は適用されないのだろうか。
ここでいくつかの選択肢が浮かび、どれかを実行した。
１）適当に受け流す
あまりのことに動揺して、適当に相づちを打つことしかできなかった。郵便局を出てから冷静に考えるにつけ「あれは怒った方がよかったんじゃないか」という思いがつのる。このネガティブなイメージは深刻だった。「電撃ガンパレード・マーチ」は即座に兄に押しつけられ、きっとゲームをプレイすることないだろう。
２）激しく文句を言う
結果A）
となりの局員のお姉さんの横にらみの後押しもあって、即座に反撃する。
「オタクは黙ってろ。死ね」
おとなしくなるかと思ったが、奴は違った。どうやらこのセリフがガンパレード・マーチの誰かの口調によるネタふりだと思ったらしい。嬉々としてやつは宇宙語をしゃべり続ける。だから、全然知らないんだってば。「速見」「舞」くらいしか固有名詞しらないし。
……現実世界の出来事が原因でゲームのディスクをたたきわる、という経験はなかなか出来るものではない。もちろん、振り込みなぞはキャンセルした。
３）嫌みに文句を言う。
「郵便局員が通信欄の内容についてしゃべるのって、法律違反です。他の郵便局で振り込むんで、それ返してください」
こういうセリフは当然本気で言わなくては意味がない。この時点で隣のお姉さんが警戒態勢に走る。オタクへの嫌悪とクレーマへの同情といらだちのまざった複雑な表情だ。
……こいつの神経回路は別のもので出来ていた。不満そうな口調で
「別に、そんなたいしたことじゃ……」
とぶつぶつ言いながら……振り込み処理を終わらせ、領収書をさしだしやがった。ここで徹底抗戦するという選択もあったのだが、あまりのことにあきれてそのまま帰ってしまった。救いといえば、心から同情するようなとなりの局員のお姉さんの表情だろう。
４）普通に文句を言う
「あの、郵便局って言うのは振り込み内容に口を挟むところなんでしょうか」
とりあえず下手に出る。ナチュラルに嫌みが入ってしまうのはしかたない。幸い、壊れきった馬鹿ではなく、自分の行動のやばさを自覚できたらしい。とたんにおどおどして、振り込み処理をすませる。
となりの局員のお姉さんの嬉しそうな表情が印象的でした。
※
ま、現実にどういう事がおこったかはともかくとして、隣のお姉さんに心から同情します。こういうTPOをわきまえないオタク公務員が同僚ですか……
ここまでを振り返ってみたところ、「オタク系アイテムを買うことをつっこまれたからかちんときた」という考察が成立するな。んでも、私としては「通信の秘密ってそんなにゆるいものなんかい？」という思いが先に来た。実際、落花生（千葉名産）を送るときに「ピーナッツ、美味しいですよね」って言われても同じように激怒すると思うし。
ま、としょかんや(C)腰原伊織氏にとっての利用者の履歴の秘密なみにプライドを持って応対してもらいたいものである。……ま、専門職と一般職じゃそのプロ意識が違うってのは分かるんだけど、さ。
あ、ガンパレード・マーチはいいゲームなはずです。