大人になればなるほどやらなくなる遊び。しりとりである。大人がやる場合は人名などの縛りがあったり、5文字真ん中しりとりみたいに「ん」がついても続くようにルールを変更したり、まあ普通に遊ぶことはなかなかない。
普通のしりとりにおいて、意図的になにか仕掛けるとしたら「○責め」だろうか。○には多くの場合「る」が入ることになる。
「りんご」
「ごりら!」
「らんどせる」
「る、る、るり!」
「りーる」
「る、る、ルーレット!」
「とんねる」
「る、る、るぱん、じゃなくて、る、るす!」
「すりる」
「る、る、る、うわーん!」
というのが典型的だろうか。ちょっと慣れてくると逆襲を覚える。
「らんどせる」
「る、ルール!」
「(にやり)ルノワール」
「ルル!」
「なんだそれは」
「新ルルA錠!」
「ち、まあいいか、ルーブル」
「なにそれ、知らない!」
「ルーブル美術館をしらないのか、地名だ」
「そんなのないって、インチキだ!」
「知らないおまえが馬鹿なんだよ」
「馬鹿って言った、うわーん!」
ことほどさように「○責め」は有効だ。今回は逆襲に焦点を当ててみたいと思う。実際、る責め逆襲ワードはどれくらいあるのか? 今回はデータソースとして豚辞書にご登場願った。ひたすら名詞をかき集め、実に20万語オーバという恐ろしくもたのしい辞書である。早速るで始まり、るで終わる単語を検索してみよう。
るーすれんでる、るーてる、るーぶる、るーぷる、るーる、るあーぶる、るいすきやろる、るいすびる、るくそーる、るくそる、るごーる、るしふえる、るたなじえねらる、るちふえる、るなーる、るねくれーる、るのあーる、るのわーる、るびこんをわたる、るふえーぶる、るみなーる、るみのーる、るる。
23語であった。この数字はあなたにとって大きい数字であっただろうか。私としては少ないようなイメージを受けた。実際に私がしりとりで浮かびそうなのは7語程度だが。まあ、現在の豚辞書は9文字以上の単語を切り捨てる方針をとっているので、これが少なさを感じさせる原因かもしれない。しかし、9文字以上のる責め逆襲ワードはそう簡単には浮かばない。苦し紛れに「留守番電話アイドル」とか「ルーブル美術館展示中シャノアール」とか無理矢理な造語をはじめ出すのが落ちである。
もっとも、実際のしりとりではウケれば勝ちかもしれない。
実際問題として、他の文字の場合の「逆襲ワード」はどれくらいあるのだろうか。いまのコンピュータで処理すれば簡単に分かる。下記が文字別逆襲ワード数だ。
文字順 | 個数順 | ||
文字 | 逆襲ワード数 | 文字 | 逆襲ワード |
あ | 78 | い | 517 |
い | 517 | し | 426 |
う | 268 | き | 359 |
え | 11 | う | 268 |
お | 39 | か | 240 |
か | 240 | く | 167 |
が | 7 | こ | 97 |
き | 359 | す | 94 |
ぎ | 7 | あ | 78 |
く | 167 | じ | 78 |
ぐ | 13 | ち | 76 |
け | 22 | と | 72 |
げ | 3 | み | 70 |
こ | 97 | た | 55 |
ご | 11 | さ | 41 |
さ | 41 | や | 40 |
ざ | 0 | お | 39 |
し | 426 | よ | 35 |
じ | 78 | り | 33 |
す | 94 | つ | 32 |
ず | 2 | ま | 29 |
せ | 7 | な | 28 |
ぜ | 1 | る | 23 |
そ | 5 | け | 22 |
ぞ | 0 | は | 19 |
た | 55 | ど | 18 |
だ | 5 | の | 13 |
ち | 76 | ぐ | 13 |
ぢ | 0 | ひ | 12 |
つ | 32 | ふ | 12 |
づ | 0 | わ | 11 |
て | 9 | ば | 11 |
で | 0 | え | 11 |
と | 72 | ご | 11 |
ど | 18 | ぶ | 10 |
な | 28 | ら | 10 |
に | 5 | ろ | 9 |
ぬ | 2 | て | 9 |
ね | 3 | ゆ | 8 |
の | 13 | ぷ | 8 |
は | 19 | せ | 7 |
ば | 11 | が | 7 |
ぱ | 3 | ぎ | 7 |
ひ | 12 | も | 6 |
び | 3 | め | 6 |
ぴ | 0 | む | 6 |
ふ | 12 | そ | 5 |
ぶ | 10 | に | 5 |
ぷ | 8 | だ | 5 |
へ | 0 | ぼ | 4 |
べ | 3 | れ | 3 |
ぺ | 1 | ね | 3 |
ほ | 2 | び | 3 |
ぼ | 4 | べ | 3 |
ぽ | 1 | げ | 3 |
ま | 29 | ぱ | 3 |
み | 70 | ぬ | 2 |
む | 6 | ほ | 2 |
め | 6 | ず | 2 |
も | 6 | ぽ | 1 |
や | 40 | ぜ | 1 |
ゆ | 8 | ぺ | 1 |
よ | 35 | ぴ | 0 |
ら | 10 | ん | 0 |
り | 33 | ー | 0 |
る | 23 | で | 0 |
れ | 3 | づ | 0 |
ろ | 9 | ぢ | 0 |
わ | 11 | ざ | 0 |
ん | 0 | ぞ | 0 |
ー | 0 | へ | 0 |
なかなか壮観である。意外にも「る」は逆襲は十分に可能な文字である。「ぬのぎぬ」「ぬれぎぬ」しかない「ぬ」よりずっと強いし、おなじラ行の「れ」などは悲惨だ。まともな名詞は「冷却ひれ」くらいで、「レイトレ(レイトレーシングの省略形)」や箒おじさんの「レレレのレ(名詞か?)」までかり出してようやく3語である。それがありなら「レはレモンのレ」だって許されそうだが。
「ほ」だって「頬」と「泡沫候補」だけである。羽柴秀吉さん、お元気でしょうか。あなたの「は」は19語ありました。貴方は反戦派、反体制派、ハト派、どんな政治思想をお持ちでしょうか。
大勢力方面はそれはそれで面白い。「し」などは有名で、アドリブで「4×6=24(しろくにじゅうし)」などの秘密兵器が飛び出しうる。「証券会社社員食堂秘蔵のダシ」とか、無理矢理な長い単語も作成しやすい。
再び少数派に目を向ける。「ぜぜ」しかない「ぜ」は潔いけれどどこかむなしい。5語あるけど「そうこうそ」「そうそ」「そそ」「そてそ」「そんそ」とどれも意味が分からない「そ」はひどく悲しいものである。
「ずず」っと「ずーむれんず」でしらみ潰しにことばをさがしても「ず」の仲間はこれ以上見つけられなかった。
「ん」「ー」のように最初から無力な文字はともかくとして、「ぴ」「で」「づ」「ぢ」「ぞ」「へ」も手も足も出ない。しかしこのあたりは語尾として登場する機会もなかなかない。無理に逆襲することも無かろう。
そういうわけで、逆襲ワード不足の王座につくべき「かな」は間違いなく「ざ」であろう。「ざ」で終わる単語はいくらでも浮かぶが、逆襲はできないのだ。草葉の陰でグレゴール氏が嘆くわけである。
今回ネタに使った豚辞書は非常に面白いのでおすすめである。今回のネタために作ったしりとり逆襲ワード辞書はこちらに公開する。
しりとり逆襲ワード辞書(豚辞書(ver.014)のサブセット、51K)
文頭で触れた「5文字真ん中しりとり」はニコリ(ニコリスト)で提案されたしりとりの方法。5文字の単語縛りがあり、前の人の発したことばの末尾を、5文字言葉の真ん中に持ってくる。「バイオリン→試験管→キャンパス→アイスノン」みたいな感じ。