ザムザは泣いている。(02.08.01) 102

大人になればなるほどやらなくなる遊び。しりとりである。大人がやる場合は人名などの縛りがあったり、5文字真ん中しりとりみたいに「ん」がついても続くようにルールを変更したり、まあ普通に遊ぶことはなかなかない。

普通のしりとりにおいて、意図的になにか仕掛けるとしたら「○責め」だろうか。○には多くの場合「る」が入ることになる。

「りんご」
「ごりら!」
「らんどせる」
「る、る、るり!」
「りーる」
「る、る、ルーレット!」
「とんねる」
「る、る、るぱん、じゃなくて、る、るす!」
「すりる」
「る、る、る、うわーん!」

というのが典型的だろうか。ちょっと慣れてくると逆襲を覚える。

「らんどせる」
「る、ルール!」
「(にやり)ルノワール」
「ルル!」
「なんだそれは」
「新ルルA錠!」
「ち、まあいいか、ルーブル」
「なにそれ、知らない!」
「ルーブル美術館をしらないのか、地名だ」
「そんなのないって、インチキだ!」
「知らないおまえが馬鹿なんだよ」
「馬鹿って言った、うわーん!」

ことほどさように「○責め」は有効だ。今回は逆襲に焦点を当ててみたいと思う。実際、る責め逆襲ワードはどれくらいあるのか? 今回はデータソースとして豚辞書にご登場願った。ひたすら名詞をかき集め、実に20万語オーバという恐ろしくもたのしい辞書である。早速るで始まり、るで終わる単語を検索してみよう。

るーすれんでる、るーてる、るーぶる、るーぷる、るーる、るあーぶる、るいすきやろる、るいすびる、るくそーる、るくそる、るごーる、るしふえる、るたなじえねらる、るちふえる、るなーる、るねくれーる、るのあーる、るのわーる、るびこんをわたる、るふえーぶる、るみなーる、るみのーる、るる。

23語であった。この数字はあなたにとって大きい数字であっただろうか。私としては少ないようなイメージを受けた。実際に私がしりとりで浮かびそうなのは7語程度だが。まあ、現在の豚辞書は9文字以上の単語を切り捨てる方針をとっているので、これが少なさを感じさせる原因かもしれない。しかし、9文字以上のる責め逆襲ワードはそう簡単には浮かばない。苦し紛れに「留守番電話アイドル」とか「ルーブル美術館展示中シャノアール」とか無理矢理な造語をはじめ出すのが落ちである。

もっとも、実際のしりとりではウケれば勝ちかもしれない。

実際問題として、他の文字の場合の「逆襲ワード」はどれくらいあるのだろうか。いまのコンピュータで処理すれば簡単に分かる。下記が文字別逆襲ワード数だ。

文字順個数順
文字逆襲ワード数文字逆襲ワード
78517
517426
268359
11268
39240
240167
797
35994
778
16778
1376
2272
370
9755
1141
4140
039
42635
7833
9432
229
728
123
522
019
5518
513
7613
012
3212
011
911
011
7211
1810
2810
59
29
38
138
197
117
37
126
36
06
125
105
85
04
33
13
23
43
13
293
702
62
62
61
401
81
350
100
330
230
30
90
110
00
00

なかなか壮観である。意外にも「る」は逆襲は十分に可能な文字である。「ぬのぎぬ」「ぬれぎぬ」しかない「ぬ」よりずっと強いし、おなじラ行の「れ」などは悲惨だ。まともな名詞は「冷却ひれ」くらいで、「レイトレ(レイトレーシングの省略形)」や箒おじさんの「レレレのレ(名詞か?)」までかり出してようやく3語である。それがありなら「レはレモンのレ」だって許されそうだが。

「ほ」だって「頬」と「泡沫候補」だけである。羽柴秀吉さん、お元気でしょうか。あなたの「は」は19語ありました。貴方は反戦派、反体制派、ハト派、どんな政治思想をお持ちでしょうか。

大勢力方面はそれはそれで面白い。「し」などは有名で、アドリブで「4×6=24(しろくにじゅうし)」などの秘密兵器が飛び出しうる。「証券会社社員食堂秘蔵のダシ」とか、無理矢理な長い単語も作成しやすい。

再び少数派に目を向ける。「ぜぜ」しかない「ぜ」は潔いけれどどこかむなしい。5語あるけど「そうこうそ」「そうそ」「そそ」「そてそ」「そんそ」とどれも意味が分からない「そ」はひどく悲しいものである。

「ずず」っと「ずーむれんず」でしらみ潰しにことばをさがしても「ず」の仲間はこれ以上見つけられなかった。

「ん」「ー」のように最初から無力な文字はともかくとして、「ぴ」「で」「づ」「ぢ」「ぞ」「へ」も手も足も出ない。しかしこのあたりは語尾として登場する機会もなかなかない。無理に逆襲することも無かろう。

そういうわけで、逆襲ワード不足の王座につくべき「かな」は間違いなく「ざ」であろう。「ざ」で終わる単語はいくらでも浮かぶが、逆襲はできないのだ。草葉の陰でグレゴール氏が嘆くわけである。


今回ネタに使った豚辞書は非常に面白いのでおすすめである。今回のネタために作ったしりとり逆襲ワード辞書はこちらに公開する。

しりとり逆襲ワード辞書(豚辞書(ver.014)のサブセット、51K)

文頭で触れた「5文字真ん中しりとり」はニコリ(ニコリスト)で提案されたしりとりの方法。5文字の単語縛りがあり、前の人の発したことばの末尾を、5文字言葉の真ん中に持ってくる。「バイオリン→試験管→キャンパ→アイノン」みたいな感じ。

前の落書きへ 雑文一覧へ 次のたわごとへ トップページへ