最近はどうも勝ち誇る人、というのをあまり見ない。「みなさんのおかげです」とか「運が良かったです」とか「まあまあですね」とかそんな煮え切らないコメントしか耳にすることがない。テレビチャンピオンのやらせコメントではなく、真剣に「かかってきなさい」という剛の者はいないのだろうか。そういう豪快なコメントもたまには聞きたいものである。
しかし一方、逆方向に誇る、負け誇る人が最近は一杯いる。何かができない、何かを知らないことを嬉しそうに言う。極端な場合はそれができる、知っていることがなにかの間違いであるかのように語る。いちばん顕著なパターンはPCとかビデオに関することだろうか。
「私、パソコン全然わかんないんですよ(満面の笑顔)」
「ビデオの予約ってわかんないのよねえ(だからやってよ)」
「ウィルス? なにそれ? セキュリティ? そんな難しいことわかんない(うぜえな)」
こういう発言をするときの誇らしげな人々の顔はどうか。こういうような状況に直面して、嘆息しながら作業を代行した経験のある人も多いかと思う。そして通常、こういう発言をする人には「手間賃」という概念がない。
そのほかにも、事務処理関係の負け誇りも存在する。
「免許証の更新ってめったにないから忘れるんだよね(普通そうだよね?)」
「領収書ためちゃってさあ。いちいちめんどうじゃない(そういうものでしょ?)」
こういう、フォローという労働が発生するような負け誇りもどうかとおもうが、聞き手に実害の発生しない負け誇りもなかなかのものである。
「数学ってわかんないのよねー。きっとああいうの好きな人って人間じゃないのよ(選民者の目つき)」
「テレビ見ないから、芸能人のことぜんぜんわかんないんだよね(選民者の笑み)」
「彼女いない歴20年なんだよね、僕(無邪気なほほえみ)」
「赤点4つとっちゃったよ(えへへ)」
「きのうさ、パチンコで10万円すっちゃったんだよ〜(底抜けに明るい笑顔)」
私自信が負け誇る分野としては。「芸能人しらない」「体が固い」あたりだろうか。無駄な学歴で負け誇ることもあるが、これは微妙に違うかもしれない。本人にとってはネタでしかないのですが。
これらの負け誇る方法にもいくつか分類がある。
下に行くほど負け誇りという言葉にふさわしい。しかし、ネタで負け誇るのは、本人が自覚しているぶんタチがわるい。一番目のひとたちはどうかそっとしておいてあげましょう。ね。
豆知識。「全然掃除してないんだよね(喜色満面)」という人の部屋で採取された綿埃は「負埃」と言います。