むかしむかし、かみさまたちが力比べをしていました。かぜのかみさまとつきのかみさまとたいようのかみさまです。しぜんのちからをあやつるみんなのうち、だれが王様になるかきめるのです。
むさくいにえらばれたかわいそうなのうふの服をぬがすきょうそうです。かぜのかみさまはちからまかせに風をふきつけました。しかし、かわいそうなのうふはからだごととばされてしまいます。鉄のくわをからんとおとし、たおれてしまいました。工夫がたりない、とたいようとつきのかみさまはわらいました。
場のちからをあやつり、海の満ち引きをつくることができるつきのかみさまのばんです。がんばって満ち潮をつくってのうふのふくをぬらそうとしますが、のうふはかんたんによけてしまいます。並ぶものがないほど強力なちからですが、のうふがよけるひまがないくらいいっしゅんで海を満ちさせることまではできなかったのです。
ぶざまなけっかにはずかしがるつきをよこめに、たいようはにこにことかおを輝かせます。町にふりそそぐひざしですっかりあつくなりました。ですからのうふもあせびっしょりで、ついにふくをぬぎました。
しょうぶははっきりとつきました。たいようの時代のはじまりです。
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それから長い年月がすぎました。れいぎが正しいことがなによりも大事な、へいわな時代です。
かれらのしそんがおなじ力比べをはじめましたが、こんどはなかなか勝負がつきません。
らんらんと輝くたいようのかみさまのおかげで、外はとてもあつくなりましたが、家の中ののうふは涼しい顔です。長袖の着物をきて、のんびりといんきょ生活をおくっています。
いっそ家をこわしてしまえ、かぜのかみさまはたいふうをふきつけます。年期のはいったしっくいのかべはなかなかがんじょうで、びくともしません。月賦でかった、たいせつないえがこわされなくて、のうふはよかったなあとおもいました。がんばりつづけたたいようのかみさまとかぜのかみさまはいったんお休みすることにしました。
すっかりとりのこされたつきのかみさまは、ゆっくりとひがしのそらにうかびます。ぎらぎらとてりつけるたいようとはちがう、やさしいひかりで夜をかざります。今夜はあかるい満月の晩、のうふはふくをぬいでおくさんとべっどにはいります。はりきって成功の報告をしたのですけれど、それをみていなかったたいようのかみさまとつきのかみさまはつきのかみさまをうそつきだと夜の世界においだしてしまいました。
遊んでもらえるともだちがいなくなったつきのかみさまは、ひとりぼっちです。園児をおだやかにみまもるたいようもいっしょにいてくれません。地面に空気がしずんでいくような気がするほどかぜのないしずかなしずかな夜です。がっかりしたきもちの月のかみさまのみみに、言葉が聞こえてきました。
並ぶ家のまどがひらき、のうふのおくさんが顔を出して、「きれいねえ。つきが出てくれるおかげで、とてもきもちいいわ。まっくらな夜がこんなに優しく感じられるなんて」
ぶぜんとたたずんでいたつきのかみさまに、そのことばはあたたかくしみこんできました。町の夜にたたずむことが、なんだかとても素敵なことのように思えてきました。
できることはやさしいあかりで町をてらすことだけですが、今、つきのかみさまはとても満足です。
すえながくしあわせにくらしました。
この文章は赤ずきんちゃん☆オ〜バ〜ドライブの40000ヒット記念雑文企画に乗っかって書かせてもらいました。地元は千葉県、もとは「太陽と北風」。つぎの余興ではもっと好き勝手に書きました。