WFPを振り返る:8「チェイン」

WFP8号ではFairy TopIXが発表された。長編第1位のチェインを並べよう。OFM第132回出題。なお、当然のごとく解けなかったし今も解ける気がしない。この記事の記載にあたってはオリジナルの解説をものすごく参考にしています。

詰め上がりにしても、飛車を活かして43で詰ますとか、57で詰ますとか、紛れはいっぱいある。後付で言えばどちらも非限定が消えない。いずれにしてもこれらの紛れでは9段目の馬を桂に取らせることになるが、歩が2枚余計にあるだけで詰んでしまう。

この図で飛筋と馬筋をとおして歩をちょん、という詰め上がりが浮かぶかどうか。珍しい形だけに想定が難しい。できたとしても解くにははるかなる壁がある。

消したいし、消そうと思えばすぐに消える57桂。先に消しても相当深く追える。金を先に25まで運ぶという発想に至るにはどう考えれば良いのだろうか。そしていかにも「6筋で歩を消費してね」という配置。なお、57桂を取り去ると167手の完全作。

まあ、分からないなりに並べてみよう。57桂をなんとかしないなら飛車を世に出そう。25銀、54角、85金をどうにかしたい。ではまあ、とにかく85金に働きかけよう。目標は94飛、84金。

69馬<79 25銀<24 15歩<16 同玉<14 59馬<69 26銀<25

まあとにかく銀をどける。
16歩打 14玉<15 69馬<59 36角<54

角もどける。まあ18や27だと限定しそうにないので36。馬筋を閉ざしておくとなにかいいことがあるんだろう。
目標どおり 94飛<95 84金<85

ふむ、歩打と飛車移動の繰り返しで金ノコができると。とりあえず2サイクル。

15歩<16 同玉<14 95飛<94 75金<84 16歩打 14玉<15 94飛<95 74金<75

あれ、歩を1筋でこんなに浪費していいの? 6筋じゃないの? とは思うけど始めたからにはとことんやってみよう。なあに、間違っていたら引き返せば良い。

15歩<16 同玉<14 95飛<94 65金<74 16歩打 14玉<15 94飛<95 64金<65 15歩<16 同玉<14 95飛<94 55金<64 16歩打 14玉<15 94飛<95 54金<55 15歩<16 同玉<14 95飛<94 45金<54 16歩打 14玉<15 94飛<95 44金<45 15歩<16 同玉<14 95飛<94 35金<44 16歩打 14玉<15 94飛<95 34金<35 15歩<16 同玉<14 95飛<94 25金<34

さてさて。馬筋はむしろ二重に塞がった。じゃあ何ができるか。金がいないので玉を86に運べる! そして59馬ができる! しかも玉の軌跡は斜め向き限定だ! と、この図までたどり着いたら解けるのかもしれない。では運んでいこう。

16歩打 14玉<15 15歩<16 24玉<14 94飛<95 35玉<24 95飛<94 44玉<35 94飛<95 55玉<44 95飛<94 64玉<55 94飛<95 75玉<64 95飛<94 86玉<75

59馬<69 77金<78はここまできたらこれしかない。ふんふん、78が空く、と。78が空いて嬉しいのはなにか? 69馬、78(68)成桂とできたら嬉しいんじゃないか? 方針が立ったところで玉を戻す。

96飛<95 75玉<86 95飛<96 64玉<75 94飛<95 55玉<64 95飛<94 44玉<55 94飛<95 35玉<44 95飛<94 24玉<35 94飛<95 15玉<24

ほう、飛車が4段目なので、「16歩打 同金<25」ができる。良い感触。

角をどけて69馬としたいわけだが、まだ早い。後の79馬のために先に57桂を処理する。駒を動かしてみないとわからなかったが、59馬で王手するために銀もどいてもらわないといけない。そのため、銀は6段目に、角は5段目に退避する。巧妙。

95飛<94 14玉<15 94飛<95 54角<36 69馬<59 15玉<14 95飛<94 35銀<26

みんな大好き馬ノコ。

59馬<69 25玉<15 69馬<59 26玉<25 59馬<69 36玉<26 69馬<59 37玉<36 59馬<69 47玉<37 69馬<59 57玉<47

復路。79馬<69 47玉<57 69馬<79

まだ58桂成はできない。桂成で王手が続くのは14玉のときで15歩打で手を繋ぐ。

37玉<47 59馬<69 36玉<37 69馬<59 26玉<36 59馬<69 25玉<26 69馬<59 15玉<25 59馬<69 14玉<15 69馬<59

まだ桂成はできない。銀を先にどける。角もついてくる。

36角<54 94飛<95 15玉<14 59馬<69 26銀<35

角をもどしつつようやく待望の局面へ。

95飛<94 14玉<15 94飛<95 54角<36 69馬<59 58桂成<46

成桂を運ぶ。13が空いているのが嬉しい。

15歩打 13玉<14 79馬<69 68圭<58

87玉、69馬、78成桂を目指す。ここの角の退避手順もすごい。プルーフゲームのシールドみたい、というのはちょっと違うか。

14歩<15 同玉<13 69馬<79 15玉<14 95飛<94 35銀<26 59馬<69 14玉<15 69馬<59 36角<54 94飛<95 15玉<14
59馬<69 26銀<35

ここから手順は一回目の大移動とほぼ同じ。気持ちの良い繰り返し。

95飛<94 24玉<15 94飛<95 35玉<24 95飛<94 44玉<35 94飛<95 55玉<44 95飛<94 64玉<55 94飛<95 75玉<64 95飛<94 86玉<75

念願かなって
96飛<95 87玉<86 69馬<59 78圭<68

玉を戻して、

97飛<96 86玉<87 96飛<97 75玉<86 95飛<96 64玉<75 94飛<95 55玉<64 95飛<94 44玉<55 94飛<95 35玉<44
95飛<94 24玉<35 94飛<95 15玉<24

ここから収束だ、と知っていても割と悩みました。まず目指すは16歩打。そのために角銀金とどかして、

95飛<94 35銀<26 59馬<69 14玉<15 94飛<95 54角<36 69馬<59 15玉<14 59馬<69 26金<16

16歩打 25玉<15 69馬<59 36銀<35 95飛<94 24玉<25

次の手のために成桂を運んだわけだ。

79馬<69 14玉<24 15歩<16 まで 207手

いやあ、207手という長編にしても長い旅路でした。

作者の言葉(謙遜)によると紛れは意図したものではないようだけれど、6筋に歩が立つとか、43が空いているとか、7段目を素通しにできるとか、なかなか意地悪とも言える配置が素晴らしい。そして力尽きて見たときの解の美しさ。馬の効きを右上に使うか左上に使うかで発生する玉の大移動。それをさらに重厚にする序の金ノコ。今並べても決して色褪せない逸品。