第35回妖精賞

新しい作品にも触れておこう、ということで詰パラより第35回妖精賞。2023年11月号。

配置から85飛、91香を目指したい。83角、74香、同角/91香?……ふむ、うまくない。飛合を6手目に出せない。じゃあ76角、66玉/89桂、93角、76香、同飛/91香、んーと、67玉、96飛、85飛までだ! よし解けた解けた。

あ、ダブルスイッチバック! 難しくないのはこの場合美点だろう。綺麗な短編。桂で消している余詰はわずか2つなので気分的に惜しいところではあるけれど、シンプルに収まった上にキルケ感が増したので上々だろう。

次は中編。2023年11月号。

作図技術と発想を楽しむ作品。初手は歩打しかなくて、同角でもどうにでもなりそうだけどあらびっくりこれが詰まない。でも、それで詰むんだったらなんのための受先設定なのか。作者を信用して意図を考えれば回答にたどり着けるだろう。

45歩の逆王手を凌ぐ手は同角しかない。じゃあ同角ができなかったら……?! 打歩詰だ! というわけで、45角の王手3回を経由して46角を目指すという問題だった。

45角の王手3回は割と簡単で、

45歩 同角(1回目)、「25玉 36角 34玉 45角」(2回目)、「25玉 36角 34玉 45角」(3回目)と実現できる。あとは角を46まで回してくれば良い。

25玉、56角、14玉、47角、13玉、23歩成、同玉、24歩、34玉、56角まで、初形=詰め上がりとなる。様式美が美しい。

長編は密室もの。解かなかった身で言うのも何だが、evilな破調もなく、解いて楽しめる作品だと思う。

長編は2023年12月号神無七郎氏作*。

*当初作者を間違えていました。すみません。そのため、以下ちょっと不自然な連想されます。

狭いところで長手数、ということで神無三郎作「匣の中の失楽」などを思い出したり。

とか書いて妖精都市から引っ張ってきたけど自玉詰の時点でかーなり違うな。いや狭いところで角銀歩、こちらは角歩という意味で似ているのか?

まあ鑑賞しよう。舞台は壊せないので角歩で詰めるしかない。そして考えると実は1筋では歩も使えない。と金で壁を作って角だけで詰ますことになる。見るだけで語るのも何だが、この収束がここまで長編化できるとは。

17角打 同玉<26 35角打 26角打 同角<35 28玉<17 17角<26 29玉<28 38角打

18、19がと金で埋まれば詰みで、それが実際に終局図となる。

18玉<29 27角<38 29玉<18 38角<27 18玉<29 29角<38 17玉<18 18歩打 16玉<17 38角<29 27角打 同角<38 25玉<16 16角<27 同玉<25 17歩<18 同玉<16 35角打

打った18歩を片付けながら36角。

26角打 同角<35 同と<15

と金が動く。が、

18歩打 16玉<17 38角打 27角打 同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 46角打 35歩打 同角<46 15玉<24 26角<35

取ってしまう。解こうとしていたら脱落しそうなところ。

24玉<15 35角<26 15玉<24 24角<35 16玉<15 17歩<18 同玉<16 35角<24

27手目からと金がきえた。

26角打 同角<35 16玉<17 38角打 27歩打 同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 35角<26 15玉<24 24角<35 26玉<15 15角<24 17玉<26 26角<15 28玉<17 17角<26 29玉<28 38角<16

筋違い角で追って9手目と同じ形になる。

18玉<29 29角<38 17玉<18 18歩打 16玉<17 38角<29 27角打 17歩<18 同玉<16 18歩打 同玉<17 27角<38 29玉<18 38角<27 18玉<29 29角<38 17玉<18 18歩打 16玉<17 38角<29 27歩打

ようやくメイン手順の第一歩。歩が発生して、

17歩<18 同玉<16 28角打 同歩成<27

成らせて、19まで運ぶのは簡単。

18歩打 同玉<17 19歩打 同と<28

もう一枚18とを発生させれば良いが、歩がだいぶ受方に渡ってしまった。歩合は攻方に角が2枚あるときしかできないことに留意して手を進める。

29角<38 17玉<18 18歩打 16玉<17 38角<29 27角打 同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 46角打 35歩打

一枚目。

同角<46 15玉<24 24角<35 16玉<15 17歩<18 同玉<16 35角<24 26角打同角<35 16玉<17 38角打 27歩打

2枚めはここ。

同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 35角<26 15玉<24 24角<35 26玉<15 15角<24 17玉<26 26角<15 28玉<17 17角<26 29玉<28 38角<16 18玉<29 29角<38 17玉<18

歩を1枚つかって2枚入手できた。破調なしで限界まで稼ぐ。

18歩打 16玉<17 38角<29 27角打 同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 46角打 35歩打 同角<46 15玉<24 24角<35 16玉<15 17歩<18 同玉<16 35角<24 26角打 同角<35 16玉<17 38角打 27歩打 同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 35角<26 15玉<24 24角<35 26玉<15 15角<24 17玉<26 26角<15 28玉<17 17角<26 29玉<28 38角<16 18玉<29 29角<38 17玉<18 18歩打 16玉<17 38角<29 27角打 同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 46角打 35歩打 同角<46 15玉<24 24角<35 16玉<15 17歩<18 同玉<16 35角<24 26角打 同角<35 16玉<17 38角打 27歩打 同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 35角<26 15玉<24 24角<35 26玉<15 15角<24 17玉<26 26角<15 28玉<17 17角<26 29玉<28 38角<16 18玉<29 29角<38 17玉<18 18歩打 16玉<17 38角<29 27角打 同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 46角打 35歩打 同角<46 15玉<24 24角<35 16玉<15 17歩<18 同玉<16 35角<24 26角打 同角<35 16玉<17 38角打 27歩打 同角<38 25玉<16 16角<27 24玉<25 35角<26 15玉<24 24角<35 26玉<15 15角<24 17玉<26 26角<15 28玉<17 17角<26 29玉<28 38角<16 18玉<29 29角<38 17玉<18

角がまだ受け方なので1回目とは手順が変わる。

18歩打 16玉<17 38角<29 27角打 17歩<18 同玉<16 18歩打 同玉<17 27角<38 29玉<18 38角<27 18玉<29 29角<38 17玉<18 35角打 26歩打

こっちから。26からでも2手で18とになる。

18歩打 16玉<17 38角<29 27歩成<26 17歩<18 15玉<16 24角<35 26玉<15 15角<24 17玉<26
18歩打

まだ同ととは取れない。少しだけ整理してから。このあたり繊細。

同玉<17 29角<38 17玉<18 18歩打 同と<27

あとは収束だけれど、舞台をぐるっと廻るのは気持ちがいい。

26角<15 16玉<17 38角<29 25玉<16 16角<38 24玉<25 35角<26 15玉<24 24角<35 26玉<15 15角<24 17玉<26 26角<15 28玉<17 17角<26 29玉<28 38角<16 まで 311手

構造的には「序」「1枚目の壁」「歩稼ぎ」「2枚目の壁」「収束」と、すごく新しいわけではないけれど、詰方が歩も使わない生角だけ、そして狭い空間でのかなりの長手数と、ウェルメイドな作品だと思う。