WFPを振り返る:3号

WFP3号からはこの作品を並べてみよう。Onsite Fairy Mate第137回。

なぜ千日手なのか。詰はわかりやすい目標だ。ステイルメイトもチェスでの価値を考えたら理解できる。では千日手をわざわざ目指す動機付けは何か。詰とは違う頭の使い方が要求されるパズルなのだ。

この図も箱入り娘的なパズルとして面白い。千日手は収束から考えることが有効で、この問題も例外ではない。最終2手の32と、12玉の前を考えるとと金は31から来るしかなく、もう少し逆算するとこんな形を目指せば良いことがわかる。ちょいと誇張表現な自覚はあるが、このあたりある意味レトロに近いものがある。プルーフゲームに近い、なら納得してもらえるか。

で、金を動かさないことには始まらないことがわかるが、金を千日手にならずに動かすだけでも割と大変。

22と<32 同歩<>21と 11と<>21飛 13玉<12 12と<11 23玉<13 13と<12 32玉<23 22と<>13歩 33玉<32 32と<22 23玉<33 33と<32 12玉<23 23と<33 同玉<>12と 13と<>12歩 32玉<23 23と<13 同飛<>21と、と一気に進めてこうなる。

31金を動かすには21と32玉の形が必要だった。
31と<>21金 22玉<32 32と<31 11玉<22 21と<>32金 同飛<>23と 22と<23 同玉<>11と
12と<>11歩 23玉<22 22と<12 同金<>32と 33と<32 12玉<23
このあたりはこの作の安らぎポイント。

22と/33金で金を33に持ってきてからがややこしい。ここは多分試行錯誤しかない。これが楽しいかどうかが千日手という問題設定の好き嫌いになるんじゃなかろうか。

22と<>33金 13玉<12 12と<22 23玉<13 13と<12 32玉<23 23と<13 同飛<>21と 31と<21 22玉<32 21と<31 12玉<22 11と<>21歩 22玉<12 12と<11 31玉<22 21と<>12歩 同飛<>23と 22と<23 同玉<>31と 32と<31 11玉<22 22と<32 同玉<>11と 21と<>11飛 23玉<22 22と<21 13玉<23 12と<>22歩 23玉<13 13と<12 32玉<23 23と<13 21玉<32 12と<23 同玉<>21と

飛車を呼んで、呼びすぎた歩を戻す。だったんだけど正解手順を見つけるのは大変。
ここまでくれば考えていた収束につなげるのは簡単。

22と<>21歩 13玉<12 12と<22 23玉<13 13と<12 32玉<23 23と<13 31玉<32 32と<23 同金<>33と 22と<33 同玉<>31と 32と<>31金 12玉<22 まで 84手。3×3の密室での濃密な手順。

冒頭で軽く触れた「なぜ千日手か」はもうちょっと考えうるテーマになるだろう。現状では森茂氏の作品研究と同値になってしまうかもしれないが、例を氏の作品としてはシンプルなものからひとつだけ。詰将棋パラダイス2005年4月号。

金が消えるので復元したい、と目的は明快。王での空き王手に金合をして、この向きでは王では取れないので他の駒で取る。候補は金銀桂。34歩を戻す関係から金を取るマスは22になるのだが、金桂(成桂)では玉が詰んでしまう。よって銀になる。

では銀合をどこでするのか。角を動かさずに取ること、そのために使えるのは歩1枚であることから試行錯誤すると銀合は期待通り88に限定される。なるほど、これは千日手でないとできないパズルだ。

ところで千日手は最終局面が持ち駒も含めて完全指定されているとも言えるため、かなり大胆な手順が設定されることがある。言い換えれば、紛れが果てしなく多い図となることがある。つまりはPCでの完全検討が難しくなる。現実的にはいくつかの駒を石や不動駒(効き有効)にして部分検討になるだろう。それで時々枠を壊す早詰が出たりするがそれもまた楽しい。作者にとってはたまったものではないが。