馬屋原剛「ガチャポン」

馬屋原剛氏の第一作品集「ガチャポン」。基本的には伝統ルールの作品集だが、ありがたいことにフェアリーも10局掲載されている。こういう構成の作品集を手にするのは山田耕平「うるてぃめいと」に次いで2冊目。でも伝統ルールのみカウントの全101題表記かあ。それはちょっと世知辛い。

WFP2020年5月号。フェアリーの中で一番わかりやすくかつ凄いこの7手。84飛をなんとかできれば54馬まで。じゃあ64桂。逆王手のかからない合駒があれば終わりだが、角も桂も品切れだ。……ん?……ん? 同玉、56桂、65玉とすると。

今度は受方に桂があるので64桂、56桂、54馬まで!
原型消去ならぬ駒台から駒台への原型譲渡。盤面に一切の変化を生じさせずに駒だけ渡す。いやはやお見事。

名だたるフェアリーの住民たちが見つけることのできなかったこの図面は何度見ても凄い。まだまだシンプルな協力詰でも発見はあるものだ。

もう一局楽しんでおこう。

WFP2020年12月号。長手数だがまあ考えてみよう。手数にかかわらずアンチキルケは51に戻して詰むか塞いで詰むか。これは迷うことなく前者。31銀を戻せば詰みそうなこともわかる。あとはピンされた54と、そしてアンチキルケなので68/79銀で居食いすると王手がかかる。しかしすぐに実行すると合駒がないので76玉/51玉といきなり戻ってしまい終了。なのでまあ序はこれしかないところ。

64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 25杏<16

これで相手の駒台に香が乗る。合駒ができたので68銀を実行しよう。
同と<26 34と<44 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79

合駒の位置はまた68銀/79銀の居食いができそうな68でいいだろう。そして手に入った歩を打つしかない。どこに打つと話が進むだろうか? まずは打ったあと。今同玉/51玉とされてはどうにもならないので、他の駒に取ってほしい。まあ取ってもらったとしてどうするか。歩が相手に渡ったのだから、また51に戻られることなく68/79銀が実行でき、68歩合となる、今度の持駒は香か。ふんふん、趣向がわかってきた気がする。

一回68銀/79銀 68合をすることで、一回受方の駒を移動できるわけだ。ここで局面をほぐすことを考えると、28と金に目が行く。「~34と、26玉、27香、同と」、を目標にすればよさそうだ。持駒歩のときは26、46に駒を移動でき(36は二歩)、持駒香のときはどの筋へも駒を移動できる。最終目標は39成銀。

68香打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 46歩打

飛車をどかして、

同飛<36 44と<54 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 36香打

25とを動かして、

68歩を取って戻って、

同と<25 34と<44 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68香打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45

持駒が歩なので28とは動かせないし、先のことを考えるとかなり整理してあげる必要がある。

34と<44 25玉<35 26歩打

まずは36とをいったん26へ。

同と<36 24と<34 35玉<25 34と<24 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 37香打

と金を37まで運んで、

同と<26 34と<44 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68香打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 34と<44 25玉<35 26歩打 同飛<46

飛車を26へ。

24と<34 35玉<25 34と<24 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 48香打 同と<37

これでと金を48まで運べた。なぜ48まで運ぶのか、図で見れば分かるかもしれない。まあ、もう少し進めよう。

44と<54 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68香打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 46歩打 同飛<26

飛車をどけて、

44と<54 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 34と<44 25玉<35 27香打 同と<28

ようやく28とが動いた!

24と<34 35玉<25 34と<24 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68香打
64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 34と<44 25玉<35 26歩打

ここまでくれば明快だろう。最初のと金を48まで運んだのは、37、47に収納スペースを作るためだった。せっせとしまいにいく。

同飛<46 24と<34 35玉<25 34と<24 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 37香打 同と<27

持ち駒が歩なので37とを47に移動する前に飛をどけて、と簡単に言うがよくまあ限定されているものだ。

34と<44 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68香打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 46歩打 同飛<26

29歩を持ち上げて、

44と<54 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 34と<44 25玉<35 28香打

今度は飛をどかして37とを動かす。2サイクル分一気に。

同と<29 24と<34 35玉<25 34と<24 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68香打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 34と<44 25玉<35 26歩打 同飛<46 24と<34 35玉<25 34と<24 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 47香打

もう2サイクル。

同と<37 44と<54 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68香打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 46歩打 同飛<26 44と<54 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 34と<44 25玉<35 27香打

はやらずもう2サイクル。

同と<28 24と<34 35玉<25 34と<24 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68香打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 34と<44 25玉<35 26歩打 同飛<46 24と<34 35玉<25 34と<24 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 37香打 同と<27

ついに成銀の横が空いた! 収束へ向かう。

34と<44 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68香打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 46歩打 同飛<26 44と<54 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79 68歩打 64と<54 55玉<65 54と<64 45玉<55 44と<54 35玉<45 34と<44 25玉<35 29香打

これが打ちたかった!

同全<39>31

満を持して質駒登場。すぐ戻しては駒不足なので、

24と<34 35玉<25 34と<24 45玉<35 44と<34 55玉<45 54と<44 65玉<55 68銀<79>79

最後の居食い。

76玉<65>51

念のため、54/51玉は逆王手。そして収束へ。

61金<71 41玉<51 51金<61 同と<52 31歩成<32 同玉<41 32歩打 21玉<31 31歩成<32 12玉<21 21銀打 まで 355手

収束はあっさりと。

全駒使用だからできる趣向で、長編である理由も明確で、並べて楽しい素晴らしい作品でした。

考え始めてしまえばかなりやさしいのもありがたい。