一箇所にまとまっていないけれど、フェアリーの個別の入門記事は単発的にあったりする。spring氏の1手詰から始めるフェアリー超入門や、たくぼん氏のアンチキルケ入門などだ。
ところが基幹であるところの協力詰ははっきりと入門をうたった記事は見かけない。別名のばか詰でも見当たらないようだ。という理由でちと書いてみよう、というのがこの記事だ。他の記事ではまったくもって入門という期待にはこたえられない。
協力詰のルールはとてもシンプルだ。
双方協力して最短手数で受方の玉を詰ます。無駄合やすかし詰の概念はない。
以上だ! 一応補足としては攻方に王手義務はあり、二歩や打歩詰は指将棋同様禁止されている。早い手数で詰んでしまったり同手数で複数の手順があれば不完全だし、長い手数で詰むぶんにはいっこうにかまわない。
ルールにあるのは「最短手数」だけだ。ただし、ほとんどの出題で、手数は明示されている。これがあることで「詰んだけど、これは最短手数だろうか?」とすっきりしない気持ちになることを避けられる。指定手数で詰めばはっきり解けた、となる。これはわかりやすくて気持ちがよい。
また、作者のルールとして「完全限定」がある。以遠打も成生非限定も何もない。これもまたわかりやすさに貢献している。踏み込むとやたらに複雑な無駄合も、「そんなことは考えなくてよろしい」と、明快さに振り切っている。
でもルールがすっきりしていても、先後協力して詰めるって簡単じゃない?
と思うかもしれないが、そうでもないのだ! 普通詰将棋の最長手数は1525手だが、協力詰の最長手数は驚くなかれ、32189手だ!(原則はルール違反だが非限定ありならもっと増える) 協力詰でも協力詰ならではの複雑な図面が作れ、その可能性は普通詰将棋にも負けないのだ。
入門としては短手数の簡単な例題を並べるのが普通だが、5手詰80題がランダムに出題されるWeb源泉館の紹介をもってそれに変えよう。5手と思うなかれ、わりと骨がある。上谷直希 協力詰3~9手自作ミニ作品集もいい。こちらは3~9手の30作で、丁寧なルール説明や作品解説がある。(0円だけど)購入する手間はあるが、その価値はある。
協力自玉詰のルールも負けず劣らずシンプルだ。
双方協力して最短手数で攻方の玉を詰ます。無駄合やすかし詰の概念はない。
以上だ! 一文字変わっただけともいう。王手義務があるのは攻方だ。受方は逆王手をかけて先手玉を詰ますことになる。すかし詰はないとは言ったが、攻方の持駒がなくなっているため、離れた飛角香で詰むことはある。
こちらは「逆王手で詰」という考え方が普通詰将棋にはないため、ちょっと考え方をつかむまで時間がかかるだろう。
こちらはこちらで王手を防ぐ手だけで攻方王を縛っていく手順を構築しなければならないので面白い。離れた飛角香で詰ませてもらうために持駒を消費するのも花形手筋だ。最後、王手駒を取って詰み、ではないタイプの詰ませ方もあって(どんな形でしょう?)、なかなか奥が深いのだ。
協力詰にしても協力自玉詰にしても、このシンプルにして明快なルールがあるから、あれこれルールや駒を追加したとしても明瞭な世界が保たれるのだ。受方が対抗する普通詰将棋に近いルールでも、定義がすっきりしている最善詰というルールが提唱されているが、それはまた別の機会に。
フェアリーの入口へようこそ!
※
さて、書いてみて。
なるほど、明瞭すぎて書くことがないのだな、と理解。フェアリールールの紹介記事はあってもフェアリー駒の説明記事はあまりないのと一緒だ。まあ変則駒も説明記事が必要なレベルのものもあるけれけど。
結局、内容を追求するなら協力詰の楽しさを説明しようとしないといけないのか。しかしそれって普通詰将棋でも難しくないか? いつもの3手詰でお茶を濁すのもねー。
さてこの記事、公開したもんだろうか。読んで面白い、あるいは役に立つ方がいるのかしら。公開されていたら貧乏性が発動した、ということで下書きに入れておこう。あと一応著作権は主張しません。
追記:WFP162号に協力詰超入門があった。なるほど、単一解の説明を丁寧にされている。はじめての協力詰もあった。こちらは解く視点になっていていい感じ。探し方が悪かった。