WFP21号から。
手を動かしてみると分かるが見た目以上に難しい。詰む詰まない以前に、局面を変化させることからして難しいのだ。堂々巡りしたり、打歩以外で詰んだり、手詰まりしたり。馬をちょんっと寄せたら詰むし、下手な合駒をすると逆王手だ。じゃあ手が狭いかっていうと全然そんなことはなく、鍵も全然見つからない。
極悪な寄木細工とでも言うのだろうか。全然動かないので動く方法さえ見つかれば逆に簡単かと思うとその方法が全然見つからない。ところどころかたかたいうのだけれど元に戻るだけ。いや、例え話下手だな。並べよう。途中図に至る理屈はOFMの解説にばっちりあるのでここではただひたすら感嘆しよう。
22馬<23 33桂打
実のところここまでしか読めなかった。桂以外はすぐに切れる。
45飛<35 同桂<>33飛 13飛生<33 33銀<24
45桂が発生するのはどうしようもないが、打歩ということは45桂をなんとかしないといけない。
銀合からふかーい鍵が始まる。
14飛生<>13香 24銀打
もう一枚。
33馬<>22銀 同銀<>24馬 23馬<24 24銀<33 22馬<>23銀 33角打
ここに角。これがマジックの組み合わせ。これが見つからず挫折した。しかし鍵の深さはこの程度では全然ない。
同馬<>22角 同銀<>24馬 15馬<24 14香<>13飛 33馬<>15銀 同角<>22馬 14飛生<>13香 24銀<23 33馬<>22角 同銀<>24馬 23馬<24 24銀<33 同飛<>14銀 同銀<>15飛 22馬<>23角 33銀<24 14飛<>15銀 24桂打
桂まで増える。しかもこの桂の効果はちょいと先。
同飛<>14桂 同銀<>33飛
ここで決断の一手。
36飛成<33!
この狭い盤面で、逆王手を恐れずに成るのだ!
33銀<24 45龍<>36桂
45を角にすり替える。
同角<>23龍 14龍<>23桂 同香<>13龍 24龍<13 同銀<>15龍 33馬<>22銀 同銀<>24馬 35馬<24
桂合いの意味はここ。
同桂<>23馬 14龍<>15香 24銀<33 22馬<>23銀 33歩打
そういえば打歩でしたね。
同馬<>22歩 同銀<>24馬 13馬<24 24銀<33 22馬<>13歩 33歩打
くるっと回って手持ちにするには少なくとももう一回。
同馬<>22歩 同銀<>24馬 13馬<24 24銀<33 22馬<>13歩 33歩打
もう一枚ください。そして、ついに、やっと、収束へ。
同馬<>22歩 同銀<>24馬 13馬<24 24銀<33 同龍<>14銀 34角<45
開いた!!
45歩打 同角<>34歩 33歩生<34 34角<45 45歩打 まで 73手
二歩を利用してPWCなのにピンメイト。これが歩を2枚もらった目的だった。難易度も凄いがロジックも深い傑作。鑑賞するだけでも満腹です。
片方が比較的簡単で片方がちょいと手の込んだ手順のツイン。ありがちなのが「簡単なほうはなくても……」というパターンだが、この作品はその手の非難を回避することに完璧に成功している。
b)もわずか2手多い44手なら28と 19玉 29と 同玉からa)と同じ手順に合流できる、というのが大きい。そして、これを42手に短縮するのが難しい。結局、大きく違うルートを歩むことになる。
一般的なチェスのツインでは「どちらが優位」なんてことはなく、完全に対等な関連を求められるようだが、このツインはだいぶ違う趣で、がっつり似ているんだけどちょーっとどころかだいぶ違う、なんだか矛盾するような存在、まさしく「姉妹」作なのだ。
鑑賞しよう。
a)のほう。ざーっっと掃除して、ここまでは必然。無粋な岩はごめん。
22と引、24玉、23と、24玉、24と、34と、43玉、42と、32と、同と
くるっと回して、
33と、31玉、22と、同と、21と、同と
綺麗に幕。ではb)は。
28と<38 19玉<29 18と<28 同玉<19 17と<27 28玉<18 38と<37 同玉<28
39とを慌てて動かさない。
37と<36 28玉<38 38と<37 同と<39 18と<17 37玉<28 28と<18 同と<38
入れ替わった!
27と<26 同と<28 36と<35 同玉<37 26と<25 同と<27 35と<34 同玉<36 25と<24 同と<26 34と<33 同玉<35 24と<23 同と<25 33と<32 同玉<34 23と<22 同と<24
一気に引っ張って難しくない収束。
32と<31 同玉<33 22と<21 同と<23 31と<41 同玉<32 21と<12 同と<22 まで 42手
これしかない同じ収束。素晴らしい対比。
ほえー、こんなん王手義務のあるば自(当時の表現)で詰むんだ、すっごーい、みたいな頭悪い感情だけ抱いて終了した当時の私。せっかくの機会なので並べよう。「全」取禁なので、駒を取る以外の応手がない王手は詰み。そう、取禁はフェアリーメイトをデフォルトでは採用しないルールのひとつ。
さて、じゃあ王手駒を取られる心配はないので95-77のラインから角で王手すればいいのかな、と。58銀48銀(飛)39金78(79)玉か、とここまでは考えられても、それを実現するのは大変だ。ましてや手数の縛りまである。じゃあ手順を追わせてもらおう。成禁なので生表記は略。
33角、62玉、51角、53玉、62角、64玉、53角、74玉、75歩
ここまでは普通。
65玉、66歩、55玉、64角、45玉、45歩、33玉
そう、一回ひっこんでくるっとまわる。かわいい。
55角、42玉、64角*、51玉
*33角、53玉でもよい
一回玉座に戻るのが作意。
42角、62玉、51角、53玉、62角、64玉、65歩
2周目は角筋に歩の効きを伸ばす。
55玉、56歩、66玉、68飛
飛車が世に出た。
76玉、78飛、85玉、77桂、76玉、85桂、
作られたかのように桂が逃がせる。
67玉、68銀、66玉、67銀、58銀
58をブロックしつつ68に効きをもたない銀。
46玉、47銀、57玉、48銀、67玉、58銀
でも一回スイッチバック。48も塞いで玉が詰まされる準備が整ってきた。
66玉、68飛、76玉、66飛、77玉、68金
最後の障害の金をさばく。
88玉、78金、89玉、88金、79玉、76飛、77角まで
驚異的な発見でした。時代もかわって、この規模の作品でもあっさり検討できるようになっています。また、参考として全取禁ではない取禁下(成は可)で76歩、34歩から61手で自玉が詰む。手順例はこちらの巡礼の旅より下記に引用しておく。詰工房オールカマー2011、高橋恭嗣作。
*『巡礼の旅』 (最長手数探索問題) 第58番 * * 「昨日将棋センター行ったら、隣の奴らがおかしな将棋指しててさ」 *「へえ、どんな将棋だったの?」 *「先手は3手目からずっと休まず王手を続けてついに61手で後手を詰ませたよ。」 *「それと、お互い相手の駒は1枚も取らなかったよ。後手の王様は一度通ったところは二度と通らなかったよ。」 * *さて、どんな将棋だったのでしょう? 1 7六歩(77) 2 3四歩(33) 3 3三角(88) 4 6二玉(51) 5 5一角(33) 6 5二玉(62) 7 6二角成(51) 8 4二玉(52) 9 5二馬(62) 10 3三玉(42) 11 4二馬(52) 12 4四玉(33) 13 3三馬(42) 14 3五玉(44) 15 2四馬(33) 16 4五玉(35) 17 4六歩(47) 18 5五玉(45) 19 5六歩(57) 20 5四玉(55) 21 5五歩(56) 22 6五玉(54) 23 6六歩(67) 24 6四玉(65) 25 6五歩(66) 26 7四玉(64) 27 7五歩(76) 28 8五玉(74) 29 8六歩(87) 30 8四玉(85) 31 8五歩(86) 32 9五玉(84) 33 9六歩(97) 34 8六玉(95) 35 8八飛(28) 36 7六玉(86) 37 7八飛(88) 38 6六玉(76) 39 7六飛(78) 40 5七玉(66) 41 4五歩(46) 42 3五歩(34) 43 6八銀(79) 44 4七玉(57) 45 1四馬(24) 46 3六歩(35) 47 7七飛(76) 48 4六玉(47) 49 4七飛(77) 50 5六玉(46) 51 5七銀(68) 52 6七玉(56) 53 5八金(69) 54 7八玉(67) 55 6八金(58) 56 8七玉(78) 57 6六銀(57) 58 8八玉(87) 59 8七飛(47) 60 7九玉(88) 61 6九金(68) *まで61手で詰
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