WFPを振り返る:12

WFP12号から

WFP第10回作品展より

作者より38手案が出ているけれど原図のほうが好きです。これはかなり易しめなので解図する方は解きましょう。

飛を温存しないとどうにもならないのでこう。

89飛打 98玉<99 99飛<89 88玉<98

98飛<99 79玉<88 99飛<98 78玉<79

上下運動すれば2枚取らせることができる。さてどこまで取らせたものか。

98飛<99 69玉<78 99飛<98 68玉<69 98飛<99 59玉<68 99飛<98 58玉<59
98飛<99 49玉<58 99飛<98 48玉<49 98飛<99 39玉<48 99飛<98 38玉<39
98飛<99 29玉<38 99飛<98 28玉<29 98飛<99 19玉<28 99飛<98 18玉<19

と考えたはいいが、全部取らせるしか選択肢がない。攻方は飛車を縦に動かすか横に動かすかしか選択肢がなく、横に動かした瞬間同玉で切れてしまう。

98飛<99 38飛打

あとはノーマルの協力詰にも見られる詰形へ。

同飛<98 29玉<18 39飛打 まで 37手

もう一作。

Isardamとはなんぞや、というとmadrasiの反対。マドラシは「同種駒の効きに入ると動けなくなる」。その逆、シラドマならぬIsardamは「同種駒の効きに入るような手は禁止」。

図で説明しよう。まず右半分だけ見てもらう。王手がかかりそうな手は12金、22金、12桂成。しかし、21金の効きに入る12金、22金は禁手。なので王手になるのは12桂成のみ。さてこの王手。同金で逃れそうだけど、13金の効きに入るので禁手。つまり12桂成でフェアリーメイト。

では盤面左側について考えてみよう。まず先手玉に王手がかかっているか。Isardamルールを先述の説明どおり素直に考えれば81>85飛は89飛の効きに入るので禁手なはずだ。しかしここで横槍が入る。性能変化系ルールの「歩で玉を取ると二歩になる王手」、通称「効き二歩」と同様、「これも王手で良いじゃん」という考え方がある。

性能変化系では「効き二歩有効」「効き二歩無効」という表現で分化され、IsardamではIsardam(A)、Isardam(B)という表現で分化された。Aが効きIsaradam無効、85王に取りはかかっていない、という立場で、Bが効きIsaradam有効、85王に取りはかかっているという立場だ。

大変ややこしいが盤面全体ではIsaradam(A)なら1手の完全作、Isaradm(B)なら初手逆王手の不完全図となる。また、玉を87に置くとまた違う結論に成るが、これは各自で考えてみてください。

個人的な趣味としては特記事項を減らすため、「効き二歩無効」「Isaradm(A)」ついでに「Kマドラシ」がデフォルトで、逆のタイプでどうしても出題したいときは特記事項とする、という分類が好きだが、そのあたりは実際の作品のほうが説得力を生むのだろう。

さて愚痴っぽい説明があったので再掲。関係ないけどなんか「さいけい(再掲)」を「さいかつ」と入力して間違いに気づく癖がある。

まあ飛で王手するしかなくて、飛打で受けたら王手が続かないので合駒をとって、そろそろ飛打で受けて。ここで5手目が浮かぶかどうか? 私は逆算でアプローチした。21歩に紐をつけたい。11、12に効かせたい。13飛、32-97の筋に角。とすると、後手の飛車は15に打ちたくて、13飛が王手を防ぐ手になるには、と。

こうだ! で、54が角なら詰だ!

13飛は33角による王手を防いでいる。33角が55に移動すると、13飛を53飛がマドラシ状態になるので禁手。この図が浮かべば解くのは難しくないだろう。

53飛生、54角

33に打つための角合を出し、

54飛生、15飛

飛でIsardamを利用して受け(なお、これが受けにならないのがIsaradm B)、

わかっていてもちょっとびっくり、53飛生!

55飛”成”があるのでこれで王手なのだ。あとは予習通り、

54角、33角、13飛まで8手

2回目の54角を引き出し幕。濃厚な8手でした。

Isardamを取り上げるならこっちも。これは難問。馬によって玉が斜めにしか移動できない状態であること、馬も龍もIsardamで王手が封じられていることからこれらがなんとかなるんだろうな、と。特に45玉に逃げると37Xが王手になるのは使いそうなところ。

39香、38合、同香、45玉、37桂なんて仮想手順はどうでしょう。

持ち駒は仮に一番強い金。うん、全然だめですね。36,46などがら空きです。55もだめじゃん、ということで37桂ではなく合駒を打つ一手。46金、26龍なんてどうでしょう。

なんかいい感じしません? ほら、36歩なんて打てるとあのマドラシ作品みたいに。24が空いてしまうので急がず37桂。

あれ、どうやって24を塞ぐの、と思った方もいるでしょうが、Isardamなので24香だ!

そして満を持して歩を打つと、

馬、金、桂の効きが一気に復活して三重王手! 龍の 46への効きも復活して紐がついて詰! やほう!
詰め上がりの歩が王に効いていれば四重王手だが、この図でも十分に楽しい。

手順をまとめると 39香打 38金打 同香<39 45玉<36 46金打 26龍<35 37桂打 34香打 36歩打 まで 9手

文中の「あのマドラシ作品」はこちら。第4回神無一族の反乱より。

文脈から回答は省略。限定の理屈が愉しいです。

余談。無粋なんですがこれは余詰。

作意は半時計回りに周辺めぐりして歩を連打と思われるが、解のひとつを貼っておく。

95馬<86 同と<96 76馬<87 84玉<94 66馬<76 85玉<84 76馬<66 同玉<85
77と<88 同玉<76 68と<69 同玉<77 79と<89 同龍<59 58金<49 同玉<68
59歩打 同龍<39 48金打 同玉<58 38金<29 同玉<48 28と<18 同玉<38
27と<17 同玉<28 26と<16 同玉<27 25杏<15 同玉<26 24全<14 同玉<25
14全<13 同玉<24 13銀成<22 同玉<14 12銀成<21 23玉<13 22全<12 33玉<23
23全<22 43玉<33 33全<23 52玉<43 42全<33 53玉<52 43全<42 62玉<53
53全<43 72玉<62 63全<53 82玉<72 73全<63 92玉<82 83全<73 同玉<92
まで 56手

もう少し手数をかけると上から取り始めるような手順も成立する。