WFPを振り返る:81

WFP81号から。

まあなんだこれは、という初形。取った駒で王手がかからないため駒を取りにくいAndernachでこの長丁場。玉を詰ます手がかりもほとんどなし。ちょっと触ってみるとxx角、67金、58銀、同金転、59金転(空き王手!)みたいな手順で手が続きそうなことはわかるが、それでも途方もくれなさに手が止まりがちで、実際私も手が止まった。鑑賞させてもらおう。
94角打 67銀打 58銀打 同銀成転<67 59全転<58 58全<59 48金打 59玉<49 95角打

2枚角を設置する。最初の合駒は理屈は置いておいて銀。
68全<58 58金<48 49玉<59 68金転<58

金で銀をもらう。Andernachは基本駒を取るだけで駒交換になる。
67金<68 58銀打 同金転<67

現時点ではさっぱりわからないが、ここから銀が欲しい。
68金<58 67銀打 48金打 59玉<49

銀が欲しいと分かっていればこうなのだが、なぜ銀が欲しいかに思い至るのはそもそもの目的が分かってから。それはまだ先の話。とりあえず目的を果たす。
67金転<68 68銀打 58金<48 49玉<59 59金<58 同銀生転<68 58銀<59 同金転<67

16手目から持ち駒変換がされた。
68金<58 59玉<49 57金<68 68飛打

つまるところ飛車が欲しい。そして飛車といっしょに銀を使いたい。しかし、私にはそもそも「飛車が欲しい」という発想にすら至ることができなかった。飛車があると何がありがたいのか、どうやって使うのか、続きを見ていこう。
58金<57 49玉<59 68金転<58 59玉<49 58飛打 49玉<59 68飛転<58

都合よく飛車を使うためには一回飛車を渡したほうがいい。
67桂打 58銀打 同飛生転<68 59金打 同桂生転<67

合駒は59金を取れる桂。銀は58から王手をかけるためにほしかった。ここからメインディッシュだ。
68飛<58 59玉<49 67飛<68 49玉<59 77飛<67 59玉<49 76飛<77 49玉<59 86飛<76 59玉<49 85飛<86 49玉<59

これがやりたかったのだ。ここからは収束となる。
45飛<85 67銀打 57王<47 38玉<49 83角成<94 56金打 まで 62手

同角生転とできないように83角成限定。理屈を逆にたどっておこう。
>83馬、56金で詰ますために38玉としたい
>そのためには57王としたい
>そのためには4筋に飛車を移動したい
>その飛車は85から来る
……となって、飛車は結局58から飛ノコで来ることになるのだ。ストーリーもすごいし、それを実現する手腕も素晴らしい。

n玉。基本的にはn玉を先手が動かして王手をかけるのが花形手筋だ。そしてこの作品もその手が含まれる。作品としては引用するくらいだ、十分面白い。だが、n玉の効果は玉移動を先手番で済ませることによる手数短縮に近い。

n玉といえば未だに極光2の「面白いn玉とは」という問いかけの呪縛があるように思う。他のn駒を併用しないとn玉は難しいと思っている。n玉が難しいのはいくつか理由が考えられる。1つ目。「全手順n玉」を考えると、結局n玉を運ぶだけになりやすい。また、後戻りを考えると最終手は駒取りになる。つまり自玉詰でなければ駒余りだ。これを回避するにはグラスホッパーn王などの後戻りできない駒などの別のフェアリー条件が必要になる。

そして、試してみて思ったがn玉だけ動かして運搬するのは伝統ルールのと金ベルトみたいに他の駒とリンクして運搬するより面白くないという身も蓋もない話になりがちだ。

例えばこんなの。18香を取って戻って95玉、97香まで。玉移動が非常に淡白に思える。n駒でないルールで「玉がかわす手はぬるい」という考え方があるが、「まあそうだよね」という感じがn玉を試すと強くなる。n玉を動かして王手にかかりに行くのも最初は目新しいが凄く嬉しくはない。

一方n駒でもこれは抜群に面白い。97を銀で埋めて角筋を通して96歩で詰めるのだが、そのために86での呼び出し剥がしを繰り返すことになる。

6種不成。エポックメイクな作として引用させてもらおう。こういうのは解いて見つけると嬉しいだろうなあ。すみません並べました。