WFP86号から。
23金の翻弄が楽しい。解けなかった作なのだけれど思ったこと。禁欲や強欲は「指し手を制限する」ルールなので、読まなければいけない変化紛れの量が減るということ。当たり前といえば当たり前なのだが、そのおかげで対抗系でも協力系でも手がつけやすく、路頭に迷いにくい。ということで、フェアリーを解く入門として禁欲や強欲ルールはおすすめできるのではなかろうか。
天竺でフェアリー駒。まあフェアリー駒に化けたくなりますよね。その希望は叶います。難点はそれしか手がないこと。でもこういう小品も楽しいですよね。
解答の意味の説明に半ページかかる作品。解説では「解くのは闇雲な解探しだと思うけど」というが、手をだして良かったと思うし、そういうタイプの作品ではないと思う。合駒によって駒を可視化し、-Xによって駒取りを確定させる手順は読めてもいい手順だろう。解けなかった私が解を見たときも「やられた!」であって、決して徒労感ではなかった。
邪魔駒消去というお題は置いておいて、動けない飛車2枚を軸にした香桂だけの舞い。すぐに擬似的な行きどころのない駒となる香桂に、この狭い空間で95手の長丁場。後述の永劫回帰と同時解説だったりして割と埋もれている印象ですが、傑作です。
途中図。最終的に桂を9段目に据えたいのだが、28に打たされ36に跳ねることになる。これを取ってもらいたいので46香を設置する。
それが簡単にはいかずに30手近くを要する。2筋を処理しないと香が足りないのだ。
しかももう一回28桂を打たされる。今度は46香があるので回収してもらうのは簡単。
62手目から香が1マス下がった。
おかげで収束できる、という仕組み。いつもながら見事だけれど、その中でもいいほうだと思います。
さてはて。今更ここで何を語ろうかとも思うが触れないわけにはいくまい永劫回帰。分かっている手順の塊だけで100万手オーバー、総手数1.75億。容量でいえばギガにも届こうか、という。18マスの世界だけでこんなに冒険できてしまうのだ。
逆算なら一本路、をちょっと丁寧に説明しておこう。上の図を千日手達成図と考えたときの最終手は、19にあった駒がどこかに移動する手だ。その駒の動きは19にあった駒ではなくて18にあった駒、今回は香で決まる。可能な香の効きは一マス先だけなので最終手は19苺が11に移動した手だ。
同様に、18の駒が苺だったら19色が25に、色だったら19色が26に移動したと逆算できる。香も大桂馬族も2列に限定すれば移動先は一つしかないので逆算は一本道となる。駒の動きが移動した駒ではなく、移動した駒の一つ前の駒で決まるから成り立つ理屈だ。これがそのまま作者が安南で作図した理由なのだろう。
そして2列と香、大桂馬族をつかった安南千日手には駒種のバリエーションまであった。人間に可能な手数から、この可愛くない永劫回帰まで、おそらく箱入り娘以上にたくさん。
元ネタであろうこの作品も2列だけで14364xn手ループを実現している上に、安南ではないので逆算して解く、あるいは作意設定する抜け道もない、これも素晴らしい作品。
ここから超巨大手数の可能性を見出し、安南ルールを加えることで人間には不可能な作意設定を可能とした発想がすごい。